エンパイアの法と裁判:Law & Courts

帝国法と領邦法

エンパイアの法律は複雑怪奇な創作物である。
法律体系を究めることは、魔術の習得の次ぎに難しいと言われる。
シグマーの時代、法律は部族慣習を単純に寄せ集めたものであり、「力こそ正義」であったが、エンパイアの発展とともに、法律の第一の目的は一般民衆ではなく、「領主を護る」ためのものになっていった。
近頃では中産階級の台頭により様相も変わり、法律はそういった伝統から離れ、様々な権利を定める物となっている。
都市や街の整然たる法令は、街道巡視員の荒っぽい正義と相反するし、教団の内規とギルド法は首座をめぐって争っている。
貴族の一言がしばしば死刑宣告となって降りかかる一方で、盗賊ギルドの不文律は、犯罪者にも被害者にも等しく見えざる影響力を及ぼす。
相対する司法権の管轄が複雑に絡み合う状況のせいで、訴訟が中断したまま数週間、もし
くは数力月、時には数年にもわたって放置されることも考えられる。

帝国法:Imperial Law

理論的には、皇帝が望むどんな法律も規則も自由に定めてエンパイア全土に施行させることができるが、現実はそこまで単純ではなく、法律は選帝侯に直属する“第一階”(Prime Estate)の検閲を通過しなければならない。
時の皇帝の力の強弱によって、検閲の通過難易度は大きく変化する。
そうした事態において、皇帝が確実に法律を遵守させようとしたならば、反抗的な選帝侯を従わせるために外交的な働きかけを行なったり、公的な圧力をかけることさえある。
たいていの場合、しぶしぶの忍従を得るにはそれで事足りるのだが、もし選帝侯が気持ちを変えない場合、皇帝は絶対的な司法権と、自身の裁判所での審問会の開催を請求することができる。
まれな事態だが、選帝侯による反抗的な態度が統き、軍事行動に発展することすらある。

帝国法が取り扱うのは、もっぱら財源確保や、国内外の脅威に対する安全保障、魔法使用の規定、混沌教団の撲滅といった事項に限られている。
歴史上多くの皇帝が、皇位の継承に異議が唱えられた際に、選出皇帝の地位の禅譲についての権利を主張してきた。
それらの権利は古代の慣習やシグマー自身によって行なわれた先例に基づいているのだが、こうした権限を公に認める選帝侯はおらず、全ての者は長く続く先例が作られることのないよう、よほどの緊急事態でもない限りはそれに抵抗する。

帝立裁判所は、大領邦の首都はもちろん、エンパイアの全ての大都市に存在している。
そこには帝国司法長官の推挙を通して皇帝によって任命される判事がいる。
しかし、管轄範囲の対立や、数千年前に遡る慣習のせいで、これらの裁判所はしばしば地方団体との軋轢の中に身を置いている。
ある領邦内での帝立裁判所の審議が、その案件の裁定権を認める令状を掲げた領邦領地代官たちによって中断され、声高な大論争を、被告人や民事訴訟の当事者らが不安げに見守るというのも珍しい光景ではない。

領邦法:Provincial Law

大領邦内での法律の制定にはそれぞれの選帝侯が権限を有する。
流儀は領邦によって様々で、皇帝と同様、必要とされるあらゆる法律を発布し、従わせるよう求めることができる。

タラベックランドやノードランドのような専制的な領邦では今なお全ての権力は選帝侯の手にあり、彼らは慣習も傘下の貴族や著名な顧問たちが裏で囁いている意見も自分の権限を制限できはしないと知っている。

その他の領邦はもう少し民主的な制度下にある。
たとえばライクランドでは、皇帝(にして選帝侯)マテイスによって貴族と教団高位聖職者、有力な市民による議会がライクガード城に設置され、領邦の法令や税案について提言したり承諾したりする権利を認められた。
その議会は最高裁判所としても機能しているが、ここでさえ、最終的な決定権はライクランド選帝侯の手の内にあるのだ。
領邦内の法律は、民事と刑事を対象とし、個人や家財に対する犯罪や、民事訴訟を管轄する。

農村地帯では、封建法がいまだに支配的であり、違反者は拘束され縛りあげられ、地方領主の領地裁判所へと送られる。
北部や東部では、地方貴族やその代官の面前で聴取が行なわれるが、南部や西部には陪審裁判の伝統があり、適格で都合のつく成人が陪審員を務める。
そのため、プレイヤー・キャラクターたちが陪審員を勤めるように、男爵の代官によって拘束されることもありえる……ちょうど近くの墓地を荒らそうと計画を練っていた時に!
出廷を拒むことはもちろん、重罪である。
告訴は全ての地域で認められているが、時に聴聞だけで数力月かかることもあるため、その間に熱心すぎる地方役人が独断で刑を執行してしまっているかもしれない。

領邦典範には、うんざりするほど多くの法律が記されている。
あまりの多さに一般市民はついていけず、混乱といらだちの中で頭をかきむしり、一体どれが適用されるのか、もしかすると全ては法律家を富ませるために仕組まれた陰謀なのではないかと疑うことになる。

伝統を重んじる実に保守的な土地として知られるタラブへイムの都市国家では、建国当時に遡る慣習法典が存在し、法律関係者はその各巻を金科玉条のごとくに参照し、引用して
おり、「伝承そのものが法」であるため、法典の中の矛盾は全く問題にされない。

 

特殊裁判:Specialty Courts

エンパイアとその諸領邦は、マリエンブルグの中産市民たちとは異なり、多岐にわたる特殊裁判制度を作ることはしなかった。
ほとんどの問題は通常の裁判制度上で審問され、同一の判事が刑事事件と民事事件の審問を立てつづけに担当することもしばしばである。
とはいえ、帝国制度の下にもいくつかの特殊裁判所は存在するわけで、この項ではそれらを手短に紹介しよう。

簡易裁判;Petty Courts
刑事犯罪の中でも特に重要度の低いもの、酔っ払って騒ぎを起こしたといったような軽犯罪の裁定は、地域の警備兵詰所で開かれる「簡易裁判」で警備主任や隊長が行なうことになる。
刑罰は一般に銀貨一枚から金貨一枚の罰金で、体罰は袋詰めか鞭打ち五回までに限られる。
それ以上の刑罰に相当する犯罪の場合は被告人を拘留し、通常の裁判に送らなくてはならない。
わざわざ簡易裁判のためにしょっぴく必要性すら感じない警備兵は、その場で罰金の提出
を命じる――たいていは、ちょっと一杯ひっかける金が足りない時に。

ギルド裁判:Guild Courts
商業ギルドは、たとえ特定地域において当該製品を独占的に商っている場合でも、大衆の信頼をつなぎとめておくことに心を砕いている。
粗雑な製品はギルドの評判を傷つけるし、苦情が集中しようものなら、地方領主が商売敵に認可を与えるかもしれない——善良な商人なら誰しも、慄然とせずにはいられないことだ! くわえて、見習いたちがぐれてやくざ者になりかねない問題もあるため、ギルドとしては、行き過ぎた“矯正”をする頭領や、見習いに対する義務を怠ける頭領をも厳しく監督している。

そのような次第で、ギルドの自治機構としてギルド裁判が生み出されたのだ。
そうでもしないと、世俗当局がギルド活動の監視に乗りだしかねないと思われたからだ。
重大な案件ともなれば、ギルド頭領長を議長に頭領衆が集まって告発の内容を審理し、処分を決定する。
罰金や賠償金で済むこともあれば、見習いを手放すことを強いられたり、ギルドから追放されたりする場合もあり、この場合、被告は商売を続ける権利を完全に失うことになる。
—人の人物をギルドから追放する手続きは、“黒球”の儀式と呼ばれ、処分を免れた他の構成員にもひどい恥辱をもたらす。
ギルドの性質によって、この“黒球”の儀式はギルド頭領に二通りの行為を要求する。
黒蝋で封印した丸い除名届を送るか、あるいは簡潔に、ひどい暴力をふるって波止場や
倉庫や鍛冶場などの裏で球状の塊に変えてしまうかである。

神殿裁判:Temple Courts


異端行為や冒涜の所業にくわえて、教団の所有物や神に対する犯罪行為のほとんどが、公開裁判で裁かれる。
民衆は見世物を大いに楽しみ、有罪判決から火刑へと至ることで悪名高い異端裁判は、
公衆道徳に有益な効果をもたらす。
こうした事例では、教団は自分たちの通報を受けて審理を進めてくれる官吏(選帝侯か皇帝の任命した)検察官の働きに満足している。

しかし中には、あまりにも破廉恥だったり残酷だったり、きわめてデリケートな事項に関したりすることから、公衆の目にさらすことが――もしくは、他の行政部門にゆだねることが――はばかられるケースもある。
例えば、司祭が禍つ神への信仰に堕したというような特殊な犯罪――いわゆる背教罪――の場合、神殿の司祭長か、万一司祭長が審議の対象の場合はその上役の監理下で「神殿裁判」が、内密に進められる。
神殿裁判では推定有罪の傾向が強いため、被告の運命は明るいものではない。
裁判の秘密主義的な性質が、民衆の目の届かない所での処罰につながる。
たとえば神殿の地下墓地や隔絶された修道院に幽閉したり、絞殺してからさらに首を落とし、埋葬するといったことである。

 

法の執行者:Law Enforcement

盗賊、ゆすり屋、邪教徒、殺人者、その他のエンパイアのクズどもに対抗して働いているのは、様々な法の執行団体である……エンパイア中の調査を行なう権限を持つ派遣判事から、領邦の間接税務局といったそれそれの部門の職員、田舎の警備兵にいたるまでだ。
賞金稼ぎと地方貴族もまたそれぞれの役割を担っており、上位の行政機関ができないか、もしくはやろうとしない時に、非公式に法の執行を代行する。

派遣判事:Travelling Judges

大きな街や都市には、名を上げられずにもがき苦しむ弁護士もいる。
弁護士業の生活はしばしば過酷だ。
最高クラスの者たちが手にする高額の報酬と特権を考えに入れれば、弁護士たちの競争は
苛烈なものである。
稼ぎを維持することができない法律家や、あるいはもっと悪く、地元の法律家ギルドの機嫌を損ねた者には災いが降りかかる。
そうした落伍者たちには、地方行政長官に派遣判事としての免許を申請する以外の選択肢は無きに等しい。
領内を飛びまわる職務がこうも不人気なのは、村々への巡回裁判の実施や街道巡視員との協議を進んで引き受ける者がほとんどいないからである。
街道には無数の恐怖が存在しているのだ……とりわけ、“混沖の嵐”以降は。
これらの派遣判事は民衆からは盲信的な尊敬を向けられる一方、多くの同業者からは見下されている。
免許の交付を受けることで、派遣判事は領内の特定の区域における権限を与えられる。
当地の貴族や選帝侯の助役として、絞首刑を命じ、人々をさらし台にのせ、土地争議の裁決や結婚の認定やその他様々な判事としての公務を執り行なう——ただしそれも、“正規の”判事が彼の管轄に足を踏み入れるまでのことだ。

ほとんどの派遣判事は、用心棒を兼ねた死刑執行人の担ぐ輿の上に乗って旅をする。
この不可解で芝居がかった習慣は、民衆に畏敬の念をしみこませるためにあるのだと言われ、事実「法に勝てる」などと考える者はいない。
判事は伝統的に、巨大な書物の上に腰かけたまま裁判を進める。
足を接地できなくすることで、審判が穢されることを防ぐのである。
多くの者は、彼らの職業の目印となる飾り立てた帽子をかぶっている……無学な小作農にわからしめるにはこれが最良の方法だとされているのだ。

派遣判事たちは法廷を開いたり判決を宣言したりするあらゆる場所で生活の糧を要求できる。
それ以外の報酬は、主に彼らが一年のうちに行なう裁判の数と規模に基づく。
多くの証人と巨大な陪審員団を伴う、珍しく劇的で、規模の大きな裁判は、これらの落ちこぼれた法律家にとっては夢の舞台である。
派遣判事に遭遇したプレイヤー・キャラクターたちはおそらく、特別な陪審員団に選ばれたり、あるいは夕食に招かれて「文化的な会話」を求められたりすることだろう。

街道巡視員:Roadwardens

街道巡視員とは、要は野辺の警備兵であり、田舎道を巡回し、人里はなれた宿屋や農場を見てまわる。
彼らは、勅許自由都市や地方貴族、時には選帝侯に至るまでの権力当局に雇われて、依頼主の領地から無法者やその他の危険を取り除く。
警備兵とは異なり、彼らはしばしば即席の裁判官としての権限を分け与えられ、近くの宿屋や村役場、時には犯罪現場の街道上で非公式の裁判を執り行なう。
しかし現今の非常時にあって、巡視隊も薄く広がらざるをえないため、街道巡視員はしばしば、ほとんど通り一遍の聞き取りだけで即決裁判を行なう誘惑に負け、たいがいの場合それは絞首刑執行吏の首縄によって完了する。

魔狩人:Witch Hunters

魔狩人は元々、混沌や悪魔崇拝者どもに対する防波堤となるベく、総大司教シーボルト二世によって創設された。
総大司教の印章の入った委任状を手にエンパイア中で秘密裏に調査を行なう魔狩人たちは、混沌に対する恐るべき審問官となった。
2011年にウィッセンランドの選帝侯コンラッド•フォン•ブルタイムをコーンの信者だと暴いた事例からも分かるように、その調査権限は選帝侯にすら及ぶものだった。
ウィッセンブルクの宮殿でも最も高い塔の上で繰り広げられたその戦いは、今なお詩句によって、そして当地の記念碑によって後世に伝えられている……「足元にご用心!」。
だが多くの選帝侯や他の教団の司祭たちは魔狩人と、彼らが総大司教より与えられた力を危惧していた。
“敬虔なる”マグナスが帝位に就いた時、彼は魔狩人を皇帝自身の管轄下に置き、「全ての教団の名の下に、全エンパイアに安全と公正をもたらす」ために働くように命じて、この問題による緊張を和らげた。
それ以来、魔狩人は世俗的な国家権力の一端を担うようになったわけだが、それでも多くの者は信仰上の鍛練を止めなかった。
彼らの本部はアルトドルフのシグマー大聖堂からわずか数百ヤードの地点にある、地下牢獄を備えた薄気味悪い建物である。
数世紀に渡って多くの者が入っていったが、出てこられた者はほとんどいない——生きたまま、では。
強力な貴族や聖職者であればその権限において彼らに対抗することができるであろうが、魔狩人の令状はあらゆる地方権力に取って代わる。
童話で描かれるような偏執狂というわけではないが、火刑に処すべき罪人を探して眼を光らせている。
魔狩人の職務は彼らを疑い深くさせ、必要以上の力を振るう傾向に陥らせがちである。
事が済んだあと、仕事が間違いなく為されたかを確認するのは重要なことなのだ。

 

裁判のルール

ウォーハンマーのゲーム中のいずれかの時点で、プレイヤー・キャラクターたちは必ず法に抵触する。
なお悪い場合は、捕まえられることすらあるだろう。
そんな場合、GMには何をするのかという問題が残される。
彼らをあっさり釈放してしまうのは面白味のない方法であり、目ざといプレイヤーにはどうせ犯罪を犯しても罰せられっこないのだから何も怖いものはないと思わせてしまいかねない。
そうなれば、オールド・ワールドの設定への没入感が崩れてしまうので、そうしたことはやるべきではない。
以下に、キャラクターたちを裁判にかけるためのルールを提示する。
裁判手続きは複雑な仕事だが、この項で示されている指針を参考にすれば、簡単に裁判の雰囲気を表現することができるだろう。
忘れてはならないのは、どのルールも絶対ではなく(プレイヤーは創造性に富んでいるので)、即興で対処する心構えが必要だということだ。

エンパイアの一般的な裁判
訴訟が民事であっても刑事であっても、裁判の手順はおおよそ同じである。
何者か(政府か民間人の原告)が告訴し、被告は自身の潔白を証明しなければならない。忘れてはならないのは、帝国法廷の原則は推定有罪だということだ。
プレイヤー・キャラクターたちは自身で陳述をしようとするかも知れないが、法律の複雑さは、〈学術知識:法学〉技能を持たない者がそれを行なうことを非常に危険なものにしている。
刑事訴追の場合など、政庁が裁判の当事者となる場合には、政庁は法律家を雇うことだろう。
裁判の方式は、原告代理人と被告弁護人が主張を述べ合ったうえで、宣誓を行なった証人への尋問が行なわれるという「対審制度」が採用されている。
それそれの側は相手側の証人に反対尋問を行なうことができ、お互いに相手の質問内容に対して抗議することもできる。
判事はしばしば、自身で証人尋問を行なったり、裁判期間を長引かせようとする弁護人を取り締まったりと、訴訟の中で積極的な役割を果たす。
中には、特に不適当だと判断した弁護人の場合にそばに寄って弁護士資格の剥奪を宣言する判事すらいるという。
原告側が訴えを述べ終わったら、被告側は反対尋問を受けるためにふたたび自身の証人を呼ぶことができる。
検察側の証人を呼ぶことは、新しい証拠が提示された場合に許可される――さもなければ、判事は「証人いじめ」をする弁護士に罰金を科すだろう。
最後に、原告(刑事裁判では検察)側が主張の要旨をまとめ、被告側も同様にしてから、判事が(重大事件の場合は3人の判事団のうちの判事長が)総括を行ない、判決を言い渡す。だが、エンパイアの西部や南部でたびたび見られる陪審裁判の場合は少し違う。
その場合陪審員が法廷で言い渡される評決をまとめるために退廷し、その評決が読み上げられてから、判事が判決を言い渡す。
合法的に上訴がなされたとしても、禁固刑の宣告は即座に効力を発揮する。
死刑、鞭打ち刑、切断刑の宣告は、通常上訴が全て終わるまで執行を待たれる。
しかし、上訴には非常に長い時間がかかることもあり、宣告された者は拘束され続けることになる。

裁判の手順(基本ルール)

ゲームの中で裁判をどのように処理するのかは、GMがかけたい比重の大きさに依存する。プレイヤーたちはどの程度ロールプレイを楽しむのか、そしてキャンペーンの流れの中で当面の必要性かどのくらいあるのか。
長くだらだら続く問答のシーンに耐えられないプレイヤーたちは、おそらく裁判を楽しまないだろうし、一方で、裁判所でのNPCのロールを引き受けるほど法廷ドラマを楽しみに待つ者もいるだろう。
法廷シーンは数回の単純なダイスロールで済ますこともできるし、キャンペーン全体のクライマックスに仕立てることも可能だ。
裁判を手早く解決したいならば、一連の技能テストによって処理することができる。
この方法を用いる場合、原告代理人と被告弁護人が一連の対抗技能テス卜を行なう。
もし法律家を用意できないようなら、どちらの側にも貴族や聖職者や有力な市民といったような他の代理人が用意されるべきであろう。
裁判は以下の進行手順のそれぞれを表す3回の対抗技能テストによって表現される。

手順1
冒頭陳述:原告代理人と被告弁護人は証明しようとする事実を、関連する法律をもとに説明する。
これは対抗〈学術智識:法学〉テストで判定される。
もし原告代理人か被告弁護人が〈学術知識:法学〉技能を持っていなければ、適切な〈常識〉技能で代用することができるが、その場合はテストの難易度が「困難」(-20%)になる。例えば、殺人が不法であると認識することに学位は必要ないが、法律のより詳細な点については〈学術知蹴:法字〉技能を持たない者にはわからないであろう。

手順2
証人尋問:原告代理人と被告弁護人が証人を呼び、そして相手の証人に反対尋問をする。
その目的は、供述を突き崩すことで相手の証人の矛盾やあいまいさや嘘を探り出したり、敵対証人を陥れるために使える事実をひねり出すことである。
これは対抗〈察知〉テストで判定される。

手順3
最終弁論:原告代理人と被告弁護人は、事実と法律がただ一つの真実――彼らにとって有利な判決――を裏付けていることを判事に納得させるために、全力で説得術を用いる。
これは対抗〈魅惑〉テストで判定される。

テスト難易度は状況に応じて変更して構わない。
適用例として下記の「裁判テス卜難易度」を参照する。
表の「裁判手順」の欄は、いくつめの手順のテストに修正を加えるのかを表している。
対抗技能テストのうち2つ以上に勝利した側が勝利者となり、判事は彼の依頼人に有利な判決を下す。
当然、PCたちの中には正攻法にこだわらず、脅迫や買収や身分特権などによる裏取引を通して有利な評決をだまし取ろうとする者もいるだろう。
PCやNPCたちは裁判に影響を与えるためにこれらやその他思いつく限りの方法を試すことができるが、そうした行為による影響の詳細はGMによって判断されなければならない。

裁判テストの難易度

難易度 修正 手順 適用例
超容易 +30% 2 相手の証人が犯罪者、外国人、貧民、街のクズである場合など。
容易 +20% 3 依頼人の社会的地位が相手の原告/被告よりも高い場合など。
比較的容易 +10% 1 依頼人が訴訟を管轄する教団やギルドの構成員である場合など。
平均的 ±0% 全て 特別な事情が何もない場合。
手強い -10% 3 依頼人に前科がある場合など。
困難 -20% 3 依頼人が混沌に同調したとして告発された場合など。
超困難 -30% 2 複数の信頼できる証人が犯罪を目撃した場合など。

 

上級裁判ルール

訴訟手続きがエンパイア全土に一般規格化して広まる間に、支離滅裂にもつれた矛盾した条文となり、地方の風変わりな慣習がそれをさらに複雑にしていった。
法廷裁判を詳細にロールプレイすることを望むGMには二つの選択肢がある。
一つはGMが前もって裁判の場面を「台本」化しておく方法で、望むなら、プレイヤーたちに一時的にいつものキャラクタ一の代わりに重要なNPCを割り当てて演技させてもよい。
事前に計画されていない裁判場面を詳細に表現するためには、以下の上級ルールが有用になるかもしれない。

審理進行
上記の「裁判の手順(基本ルール)」で説明されている通り、ほとんどの法廷裁判は一般的な手順で進行する——冒頭陳述、証人尋問、最終弁論、という流れだ。
しかしこの行程の申に、神明裁判、逆告訴、そして拷問すらが割り込んで来るかもしれない。
以下に提示するフローチャートは、裁判の場面の中で発生しうる一般的な追加要素を示している。
また、下記の表の「発生事象」は遭遇する事例の提案に過ぎず、相応しくない結果が出た場合、GMは再ロールをしたり、一覧から任意に選んだりしてもよいだろう。

裁判進行表の使い方

ステップ1
発言者の決定:裁判の各手順ごとに、PCたちは発言者を選ばなくてはならない。
弁護士を発言者に選ぶこともできるが、弁護士が行なえるのは以下のステップ3における
「論戦テスト」ロール1回のみに限られる。
手順内の「発生事象」で説明される追加ないし別種のテストに関しては、被告自身がロールしなければならないのだ。
複数の被告がいる裁判においては、各手順ごとに発言者が異なるようにしても構わない。

ステップ2
「発生事象」ロール:「発生事象」を決めるために1d10をロールし、判事または陪審員の「対応度」の度数の分、出た目を増減させる。
修正によりロールが10より大きくなったり1より小さくなった場合は、最も近い表結果に切り下げる。
「発生事象」に書かれた指示に従うこと。

ステップ3
各手順における「論戦テスト」 ロール:主要手順(1、2、3)で勝利するために、「論戦テスト」(対抗技能テストで解決される)がロールされる。
使用する技能は『裁判進行表』のそれそれの見出しに記載されている。「知識テスト」は〈学術知識:法学〉を用いる。
適切な分野の〈常識〉技能で代用することもできるが、-20%のペナルティを受ける。
「尋問/拷問」手順と「神明裁判」手順におけるテストは最後に発言した被告によって行なわれる。
もし最後の発言者が弁護士だった場合、「尋問/拷問」や「神明裁判」手順のテストを行なう被告を1人無作為に選ぶこと。

ステップ4
裁判員の心証修正:それぞれの主要手順(1、2、3)の「論戦テスト」に勝利したPCは判事または陪審員の「対応度」を1段階向上させ、敗北した手順1つ毎に1段階悪化させる。
GMは判事または陪審員の「対応度」の変更記録を残しておかねばならない。

ステップ5
次の手順へ進む:現在の手順に再び戻る場合に備えて「裁判進行表」に目印を置いてから、次の手順に進む。
プレイヤーは裁判のそれぞれの手順の中でロールプレイを行なうことを推奨されている。
そしてGMは彼らの努力に応じて臨時のロール修正を与えても構わない。

判決の修正
犯罪の規模に応じて、「有罪判決」 ロール(手順4)に修正が適用され、判事または陪審員の「対応度」の度数がこのロール結果に加えられる。
ダイス・ロールの修正の結果11以上になった場合は10として、0以下になった場合は1として扱う。

上級裁判進行表

手順毎の論戦テスト修正

難易度 修正 手順1 手順2 手順3
超容易 +30% 被告かその代理人が訴訟を有利 にさせる具体的な判例を提示で きる場合など。 相手側の証人が犯罪者、外国人、 貧民街のクズである場合など。 原告が名の知れた邪教団の信者 であったり、外国の工作員であ る場合など。
容易 +20% 被告かその代理人が関連した法令を調査するのに少なくとも1 週間をかけた場合など。 相手側の証人がいない場合など。  被告の社会的地位が原告よりも高い場合など。
比較的容易 +10% 被告が訴訟を管轄するギルドや 教団の構成員である場合など。 被告の過失による物的証拠が存在しない場合など。 被告かその代理人がその地で人気のある人物である場合など。
平均的 ±0% 特別な事情が何もない場合。
手強い -10% 被告かその代理人に学がない場合など。 証言してくれる証人がいない場合など。 被告に前科がある場合など。
困難 -20% 被告が逮捕に抵抗した場合など。 被告の過失を明白に示す物的証拠が存在する場合など。 被告が混沌と同調したとして告発された場合など。
超困難 -30% 被告が当局に現行犯として捕まった場合など。 複数の信頼できる証人が犯罪を目撃した場合など。 被告が名の知れた邪教団の信者であったり、外国の工作員であ る場合など。

手順1:冒頭陳述
論戦テスト:〈学術知識:法学〉対抗テスト

ロール 発生事象
1 偏った判事または陪審員:裁判員の対応度が「冷淡」(-1)から始まる。
2 時代遅れの法制:PCは論戦知識テスト(対抗〈学術知識:法学〉または、適切な〈常識〉(-20%)テスト)に1回ではなく 2回勝利しなくてはならない。
3 古風な慣例:PCはこの手順で勝利するために〈魅惑〉テストにも勝利しなくてはならない。
4 堪え性のない判事または陪審員:もしPCが論戦知識テストに敗北したなら、「神明裁判」手順に進むこと。
5~6 通常の進行:通常どおり論戦知識テストを行なう。
7 幸運な抜け道:もしPCが論戦知識テストに勝利したなら、そのまま「逆告訴」手順に進んでもよい。
8 超法規的措置:PCは〈学術知識:法学〉または〈常識〉テストの代わりに、修正なしの〈魅惑/はったり〉テストを用いることができる。
9 直前の法改正:原告は自動的に論戦知識テストに2段階失敗する。
0 同情的な判事または陪審員:裁判員の対応度が「共感」(+1)から始まる。

手順2:証人尋問
論戦テスト:〈察知〉対抗テスト

ロール 発生事象
1 意表をつく証人:PCは綸戰〈察知〉テス卜に1回ではなく 2回勝利しなくてはならない。
2 内輪もめ:PC側の証人か弁護士が二の足を踏む。論戦〈察 知〉テストに-10%のペナルテイ。
3 新たな証拠: PCはこの手順で勝利するために〈魅惑/はっ たり〉テストにも勝利しなくてはならない。
4 陰険な脅迫:もしPCが手順1で勝利していたなら、手順 2は〈察知〉テストに代え論戦〈威圧〉テストで争うこと になる。
5~6 通常の進行:通常どおり論戦〈察知〉テストを行なう。
7 気弱な証人:PCは〈察知〉テストの代わりに、修正なしの 〈威圧〉テストを用いることができる。
8 癒着:相手側の証人か弁護士は論戦〈察知〉テストを放棄 するよう買収されるかもしれず、自動的に〈察知〉テストに2段階失敗する。
9 穴だらけの証拠:PCに対する物的•人的証拠は認めら れない。論戦〈察知〉テストに+10%のボーナス。
0 地方の慣例:もしPCが論戦〈察知〉テストに勝利したなら、 「神明裁判」か「逆告訴」のどちらかの手順に進んでもよい。

・PCが手順1と手順2の両方で勝利した場合:その時点での 即時放免を受け入れるか、「逆告訴」手順に進んでもよい。
・PCが手順1で勝利し手順2で敗北した場合:「神明裁判」手順に進むこと。
・PCが手順1で敗北し手順2で勝利した場合:「最終弁論」に取りかかる。
・PCが手順1と手順2の両方で敗北した場合:「尋問/拷問」手順に進むこと。

手順2-A:神明裁判

ロール 発生事象
1 流血方式:PCは切り裂かれ、1d10点の【耐久力】を失う。「困難」(-20%)な【頑健力】テストに成功したなら、PCは無罪とされる。
2~3 決闘裁判:PCは判決を決めるため、原告と一対一で対決しなければならない。双方が代理戦士を立てることもできる。
4~5 火渡り:PCは裸足で熱した石炭の上を歩かねばならず、ダメージ値2の命中を受けると共に、治療を受けるまで【移動力】が1減少する。
【意志力】テストに成功したなら、PCは無罪とされる。
6~7 冷水:PCは水に投げ入れられ、無罪とされるためには「比較的容易」(+10%)な〈水泳〉テストに成功しなくてはならない。
8~10 戦鎚裁判:PCと原告はハンマーを与えられる。どちらかが疲れきって降ろすまで、それを天高く掲げ続けなければならない。
対抗【筋力】テストによって勝者を決定する。

・PCが「神明裁判」を耐え抜いたなら、「神明裁判」手順の後に裁判は終了する。
・PCが「神明裁判」に屈服したなら、以下の「尋問/拷問」手順に進む。「尋問/拷問」手順では「発生事例」ロールが3回繰り返され、全て耐え切るか、いずれかの時点で【意志力】テストに失敗して自白が引き出されるまで続くのだ。
その後、「有罪判決」手順に進むこと。

手順2-B:尋問/拷問

ロール 発生事象
1 頭蓋潰し:pcは頭部を万力で締め上げられる。PCは1d10点の【耐久力】を失う。さらに、【頑健力】テストに成功しない限り、【知力】能力値が(永
続的に)1d10%減少する。
耐え切るために「超困難」(-30%)な【意志力】テストに成功しなければならない。
2 鉄の処女:PCは釘の並んだ棺に閉じ込められ、1d10点の【耐久力】を失う。耐え切るために「困難」(-20%)な【意志力】テストに成功しなければならない。
3 灼熱の足:PCの足は熱した石炭で包まれ、1d10/2点の【耐久力】を失う。治療を受けるまで【移動力】が1減少する。
耐え切るために「手強い」(-10%)【意志力】テストに成功しなければならない。
4 四肢牽引:PCは拷問台の上か2頭の馬によって引っ張られる。「困難」(-20%)な【筋力】テストに成功しない限り、1d10点の【耐久力】を失う。
耐え切るために「平均的」(±0%)な【意志力】テストに成功しなければならないが、ロールの必要があるのは【筋力】テス卜に失敗した場合のみである。
5 針と刃:PCは切り付けられたり突き刺されて、1d10/2点の【耐久力】を失う。耐え切るために「平均的」(± 0%)な【意志力】テストに成功しなければならない。
6 指詰め:PCは指を万力で締め上げられ、2点の【耐久力】を失う。
耐え切るために「比較的容易」(+10%)な【意志力】テストに成功しなければならない。
7 抜歯:PCは歯を抜かれ、1点の【耐久力】を失う。
耐え切るために「容易」(+20%)な【意志力】テストに成功しなければならない。
8 水責め:水や他の液体がPCの喉に注ぎ込まれ、鼻はふさがれる。耐え切るために「超容易」(+ 30%)な【意志力】テストに成功しなければならない。
9~10 尋問:PCは拷問の脅威の下で尋問される。自白するか否かは自分で決めて構わない。

・PCが「尋問/拷問」手順を無事耐え切ったなら、元の手順に戻って通常通り裁判を進行する。
・PCが自白したなら、「有罪判決」手順に進むこと。

手順2-C:逆告訴

ロール 発生事象
1 冗長な条文:裁判は1つ前の手順に差し戻される。PCは以前の論戦内容を思い出すために、〈学術知識:法学〉テストに成功しなければならない。
もしこのテストに失敗したなら、対抗テストは再ロールされなければならない。ただし、手順内の「発生事象」を再ロールする必要はない。
2 堪え性のない判事または陪審員:PCは〈魅惑〉テストを行なわねばならず、失敗したなら「神明裁判」手順へ進む。
もし〈魅惑〉テストに成功したなら、この表で再ロールすること。
この項目はロールされるたび何度でも適用される。
3~4 棄却:裁判は1つ前の手順に差し戻され、通常通り進行する。
これ以降「逆告訴」は発生しない。
5~6 決闘裁判:PCは判決を決めるため、原告と一対一で対決しなくてはならない。双方が代理戦士を立てることもできる。
裁判は決闘の結果により結審する。
7~8 公開討論:PCはNPCに有罪判決を下させるために論戦知識テストを試みることができる。
もしこのテストに敗北したなら、1つ前の手順に戻って通常通り継続すること。
9 人的証拠:PCはNPCに有罪判決を下させるために〈世間話:聴き取り〉テストを試みることができる。
もしこのテストに失敗したなら、証拠不十分により裁判は打ち切られる。
10 尋問/拷問:NPCは2d10点の【耐久力】を失わされた上、有罪判決を避けるために3回の【意志力】テストに成功しなければならない。
・自白が引き出されなければ、1つ前の手順に戻って通常通り進行すること。
・自白が引き出されたなら、裁判は結審する。

・「逆告訴」手順に進めるのは、一般に進行表の「発生事象」の中で指示があった場合である。

手順3:最終弁論
論戦テスト:〈魅惑〉対抗テスト

ロール 発生事象
1 推定有罪:PCは論戦〈魅惑〉テストに1回ではなく 2回勝利しなくてはならない。
2 再審抗告:裁判は1d10日以内に手順1から審議しなおさなければならず、その間PCは拘留されるか、外出禁止下に置かれる。
3 決定的な反対尋問:「最終弁論」を続行するために、PCは対抗〈察知〉テストに勝利しなければならない。
もし敗北したなら、「尋問/拷問」手順に進むこと。
4 拘禁:PCは「論戦〈魅惑〉テスト」の終了後に1d10日に渡り拘束され続け、その後判決が言い渡される。
5~6 通常の進行:通常どおり論戦〈魅惑〉テストを行なう。
7 優柔不断な判事または評決不成立:PCは「論戦〈魅惑〉テスト」の終了後に1d10日に渡り外出禁止下に置かれ、その後判決が言い渡される。
8 推定無罪:もしPCが論戦〈魅惑〉テストに敗北しても、「有罪判決」ではなく「神明裁判」手順に進むことができる。
9 陳情受諾:もしPCが論戦〈魅惑〉テストに敗北したなら、再ロールを行なうことができる。
10 決闘裁判:もしPCが論戦〈魅惑〉テストに敗北したなら、「有罪判決」の代わりに決闘裁判の機会が与えられる。
双方が代理戦士を立てることもできる。

手順4:有罪判決
これまでの3回にわたる対抗論戦テストの結果、成功/失敗の度合いに応じて、ポイント差が生じているはずだ。
判決は、そのポイント差に応じて下される。

ポイント 判決
1 死刑:PCは絞首刑、打ち首、火あぶり、または幽閉される。
処刑を回避するために【運命点】が使われることだろう。
2 切断刑:犯罪の規模と性質に応じて、指1本から手、あるいは腕までもがPCの体から切断される。
3 懲役刑:犯罪にふさわしい期間、PCは投獄される。
期間は1d10年か終身かのいずれかである。
4 追放刑:PCは二度と戻らないという命令(破ることは死の恐怖を伴う)と共に、地域から追放される。
この刑罰は地域住人にのみ言い渡され、放浪者に対しては再ロール。
5~6 晒し刑:PCは1d10日間さらし台か絞首台につなぎ置かれる。
7~8 鞭打ち刑:PCは1d10×10回の鞭打ちを与えられる。
鞭打ち10回毎にダメージ値1の命中を受ける。
9~10 罰金刑:PCは犯罪の規模に応じた罰金を課せられる。
一般に5gcから50gcの間である。
罰金は罪状に応じて被害者やギルド、あるいは裁判所に支払われるべきである。

判決の修正

犯罪の規模 犯罪の例 判決修正
軽犯罪 ささいな窃盗、暴行、不敬、小さな破壊行為 +4
重犯罪 大掛かりな窃盗、殺人、放火、異端、無認可の魔法、密輸 ±0
凶悪犯罪 混沌崇拝、国家反逆、大量虐殺 -4

 

 

 

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