ドワーフ

ウォーハンマー・アーミーブック より
ピート・ヘインス(執筆)

ドワーフこそ、ウォーハンマー世界において最も古き民のひとつに他ならない。
天地創造の昔より、彼らはオールドワールドの東の辺境をなす広大で険しい山々の連なり「最果て山脈」に居をかまえていた。
彼らは、雲つく山々と深い渓谷のはざまに、巨大な地下要塞都市群を築いてきたのだ。
ドワーフ帝国と呼ばれた彼らの国は、はるか北の果てから南の彼方にいたる広大な領域を支配し、地底深く坑道の枝を伸ばしたという。

しかしそんな日々も、今となっては過ぎて久しい過去の栄光となってしまった。
現在、要塞都市の多くは廃墟と化すか、忌むべき怪物たちの棲みかとなっている。
過ぎ去りし日々の栄光。
それらはもはや、ドワーフの手に今も残るわずかな要塞都市の奥深く……人影もまばらな大広間で吟じられる叙事詩によって偲べるだけだ。

世界広しといえども、掘削と採鉱の技術においてドワーフの右に出る者はいない。
彼らは金属や宝石といった鉱物資源を求め、自分たちが住む山の地中深くを掘り進む。
そしてこれらの原料をもとに、驚くべき匠のわざを駆使して、宝飾品から武器や防具、はては空飛ぶ機械にいたるまで、ありとあらゆる神秘の品を作り出すのだ。
ドワーフ要塞都市の下層部には、例外なく地下迷宮が広がっている。
ドワーフが洞窟を掘り進み、何世紀もかけて、新たな富を求めて広げた坑道網が、やがて地下迷宮と呼ぶに相応しい空間となったのである。

ドワーフは最高の腕を持つ職人であり、何であれ自分の仕事には大きな誇りを持っている。だから、いくら急かされても絶対に手抜きをしないし、適当な粗悪品を仕上げることもない。武器や具足の製作、砦の建築、名高いエンジニア・ギルドによる機械装置の考案など、ドワーフの持つ発明と技術の才たるや、オールドワールドで他に並ぶ者がないと断言できる。
ハイエルフの職人も含め、他のいかなる種族も、ドワーフが持っ名匠のわざと完璧な職人気質には、とうてい太刀打ちできないのだ。

ドワーフは、もっぱら鉱物資源やそれらの加工品を近隣の種族に売ることで、生活必需品を手に入れる。
商人の手で持ち込まれた穀類や果物は、要寒都市の中で金属製品や黄金と交換されるようだ。
要塞都市の内側でも数種類の作物が育てられ、山の頂上近くにある牧草地では丈夫な家畜たちが草を食んでこそいるが、山岳地帯の土地は痩せているし、そもそもドワーフは農耕を得意としない。
だが、そのかわり彼らは熱心な狩人であり、どれほど高い山の頂でも、肉や毛皮を調達することができる。

もし戦争で交易路が絶たれ、要塞都市が包囲されるような事があれば、頑固で知られるドワーフは「石パン」をかじって空腹をしのぐという。
これは野生の穀類と砕いた石を混ぜて焼いた特製のパンで、上等のドワーフビールで流し込めば、そう馬鹿にしたものでもない(らしい)。

このビールというのがまた滋養満点らしく、ビールさえあれば、ドワーフは数週間命をつなぐことさえできるそうだ。
どの要塞都市でも、樽ごと酒を売る酒屋が必ずあり、他では出せない味わいと効能をたいそう自慢にしている。

齢、富、匠のわざ

ドワーフというのは無愛想で、非常に自尊心の強い種族だ。
他種族に対して賞賛の言葉を口にすることはほとんどないし、それどころか他種族の偉業をしばしば軽蔑さえする。
そんな彼らが何よりも尊重するのが、「齢」「富」そして「匠のわざ」である。
ドワーフはことあるごとに、自分たちが最古の種族であること、自分たちの祖先が巨万の富を築いたこと、またドワーフの建築と鍛冶の腕がいかに比類のないものであるかを、延々と語って聞かせる。
だがそれは、けして自慢話ではない。
ドワーフをして”事実を正確に伝えている”だけなのだ。

戦いで死ぬか、不慮の災難にでもみまわれないかぎり、ドワーフは並外れて長命な種族である。
また、ドワーフにとって、鬚の長さと豊かさは、すなわちその人物の重ねた齢と叡智の象徴とされる。
それゆえ彼らは鬚をことのほか大切にし、けっして短く刈りそろえたりしない。

ドワーフは、何事によらず、次にどうするべきか迷ったときは、いちばん立派な鬚の持ち主に教えを乞う。
それが今も昔も変わらない、問題解決のための最も賢明なやり方なのだ。
加えて、ドワーフは古いもの、時代を重ねたものに大きな敬意を払う。
それらが長い歳月を経てなお人々の記憶にとどまり、親しまれていることを評価するのだ。
ドワーフにとって名匠の作品は、本人の死後も生き続け、過去を偲ぶ縁である。
昔の装置や建造物を維持して使い続けるのも、それらをつくった先人に対する崇敬の念のあらわれなのだ。
匠と呼ばれるドワーフ職人ならば誰でも、古い武器を鍛えなおしたり、古代の宝物を修復する技術に熟達している。

また、ドワーフは富をため込むことに目がない。
もともと勤勉な種族ゆえに、懸命に働いて財貨の蓄積に励むのは、彼らにとってごく自然なことなのだ。
あるドワーフが死ぬと、その財産は一族で分配され、子々孫々へと受け継がれてゆく。
代々伝わる家宝は富の源泉としてのみならず、生者と死者とを結ぶ形見としてことさら重要なのだ。
金銀財宝の山を存分に積まなければ、ドワーフの心が休まることはない。
そしてそのてっぺんに座って悦に入るのが、彼らの生きがいなのである。

上古の昔、王の中には、伝説的とさえいえる巨万の富を築いた者も少なくない。
現存する要寒都市に今も収蔵されるこれらの財宝は、今なおオークやゴブリンといった、征服の野望をたぎらせる外敵の貪欲な目を惹きつけてやまない。
しかしドワーフは心身ともにきわめて強靭な種族であり、要塞都市にふりかかる外敵の侵略をよくしのいできた。
だが、数千年に渡る時の流れは無情である。
かつては難攻不落を誇った要塞都市群も、その多くが奮戦むなしく、オークをはじめとする侵略者の手に落ちた。
そこに住んでいたドワーフは追い散らされ、虐殺の憂き目にあい、隠されていた財宝は奪われ、世界中に散らばってしまったのである。

ドワーフはかたくなに名誉を重んじる民であり、「誓い」「契約」「約束」の数々に絶対的な価値をおいている。
ドワーフは、いったん取り決めを交わしたらけっして忘れず、どんな代償を払ってでも、それを守ろうとするのだ。
また、父祖が交わした約束や誓いは、たとえそれが何世紀前のことであってもけして忘れず、確実に果たすことが常識とされる。
そのかわり、ドワーフは相手に対しても同じことを求める。
約束をたがえた者とその一族には、その償いをさせずにはおかない。
ドワーフにとって、信頼を裏切ることは、考えうるかぎり最悪の侮辱であり、また取り返しのつかない過ちでもある。
反故にされた誓いは永遠に記憶され、裏切り者は必ずや相応の報いを受けるのだ。
ドワーフという種族全体に対する大きな裏切りは、カラザ=カラクに収蔵された大書、「大いなる怨恨の書」にひとつ残らず記録されている。
ドワーフの歴史そのものともいうべきこの書物を事前にくまなく調べることなしには、いかなる交渉ごとも始まらない。
「太いなる怨恨の書」は言うなればドワーフという種族の至宝だ。
そこに激しい筆致でつづられた内容の多くは、伝承や言い伝えの形でも語りつがれてきた。これらを”自分たちの父祖に対してなされた許しがたい罪”としてすベてのドワーフが記憶しているのは、しごく当然のことだ。

ドワーフはエルフや人間と違って魔法に疎い。
ゆえに、いわゆる魔法使いはドワーフ社会に存在しないのだ。
その一方で彼らは、他種族とは違う方面で魔法に深く通じている。
ドワーフと魔法は、武具やその他の秘宝をつくる匠のわざを通じて、密接に結びついているのだ。
ドワーフのルーンスミス(篆刻鍛冶)は、最高の武具をはじめとする、さまざまな魔法の品々を造り出す最高の匠である。
彼らはルーン文字を用いて「魔力の風」をとらえ、その不可思議な力を品物に封じ込める技に熟達した名匠なのだ。
彼らの知識は、はるか父祖の時代から口伝されてきたものである。
中でもとりわけ強大なるルーン文字に関する知識は、”秘中の秘”として、ひとにぎりの卓越したルーンロードのみ知るところとなっているようだ。

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