数多の戦場で負傷兵の望みを叶え続けたハリングは、兵役を終えて町の酒場で一人、生き残ったことに祝杯をあげていた。
そこに、人相の悪い手下を連れた盗賊団のリーダー ‟クライチェック”が、ハリングのテーブルの向かい側に腰掛ける。
トラブルを避けたいハリングは、席を移動しようとしたが「ハリングさんですね? 」とクライチェックに呼び止められる。
どうしてこの悪名高い男が自分を知っているか? と疑問に思ったが、彼の手下の中に戦場で見覚えのある顔の奴がいる。
エッグハルトは「今日は、仕事の話を持ってきたんですよ。あなたにとっても、いい条件だと思うんですけどねぇ? 」と言葉は丁寧だが、目で威圧されてしまい、一度浮かせた腰をまた椅子に戻してしまった。
仕事とは、クライチェックの用意する町はずれの小屋でPoppyからできる鎮痛薬を精製することだった。
数人の部下をつけるので、彼らにPoppyの育て方と、精製方法を教えることで、今後ハリングが研究するための工房と不自由することのない金を約束するというものだった。
どうせ断っても、鎮痛剤の精製方法を拷問で聞き出され、結局は組織の資金源になる想像は付いていたので、ハリングは渋々、引き受けた。
それから数か月後、賑やかだった町は色を失いはじめ、路地裏には生ける屍同然となにった廃人たちの低いうめき声が聞こえるようになった。
町の盗賊ギルドからも一目置かれる存在になったハリングの生活は大いに潤ったが、心は満たされていなかった。
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