狂気

狂気点の獲得

【狂気点】はキャラクターが正気を保っているかどうかの指標である。
【狂気点】を累積していけば、それだけ精神の均衡が崩れやすくなる。
狂気点のを獲得する機会は下記のような場合だ。

・クリティカルヒット
キャラクターはクリティカルヒットを受ける度に【狂気点】を1点獲得する。
たとえ、負傷が治癒されたとしても、死に瀕したトラウマは、【狂気点】として残り続ける。

・恐慌
キャラクターが恐慌テストに失敗する度に【狂気点】を1点獲得する。

・その他
GMの裁量で、キャラクターがひどく恐ろしい出来事に遭遇した場合、【意志力】テストを指示して失敗した場合、通常1点の【恐怖点】を付与する。
拷問を受けた、おぞましい怪物から攻撃を受けた、ネズミの大群のいる穴に閉じ込められた、恋人を殺された、ゾンビ・ディーモンなどと遭遇したなど、およそトラウマになりそうな事柄が、【狂気点】付与のチャンスなのだ。
GMは、状況次第では1点以上の【狂気点】を付与する場合もあるかもしれない。
上限を6点までとして、GMの裁量でプレイヤーに【狂気点】を付与しよう。

精神障害の獲得

キャラクターの【狂気点】が6点に達した時点で、【意志力】テストを行ない、成功すれば何事も起こらない(5点までは100%正気を保てているということだ)。
次に【狂気点】を1点獲得する毎に【意思力】テストを行ない、失敗すると精神障害を獲得する。
精神障害を1つ獲得したなら、6点の【狂気点】を解消できる。

精神障害はGMが相応しいものを選んでもいいし、1d100でランダムロールしてもよい。

ロール 精神障害 ロール 精神障害
01~05 内なる獣 51~55 絶望の心
06~10 冒涜的な憤怒 56~60 フィーンドの宿主
11~15 脳炸裂 61~65 記憶のナイフ
16~20 腐りゆく肉体 66~70 恋わずらい
21~25 譫妄状態の救世主 71~75 マンドレークの男
26~30 絶望的な運命 76~80 世俗の被害妄想
31~35 恐怖症 81~85 じっとしていない指
36~40 放火魔 86~90 狂おしい渇き
41~45 幸運の奴隷 91~95 悪意の妄想
46~50 栄えある腐敗 96~00 戦慄と愉悦のルーレット

精神障害の説明

精神障害は原則、永続的なペナルティである。

【悪意の妄想】
ペナルティ:【協調力】-10%(永続的に)

解説:オールド・ワールドでは、信頼は壊れやすいものであり、敵はそこらじゅうに溢れている。
冒険者が出会う人々のなかには、約束を反故にしたり、持ち物を盗んだり、危害を加えたりする輩も数え切れないほどいる。
エンパイアですら穢れており、虚言者、盗賊、山賊、裏切り者、詐欺師、弁護士、扇動者、よそ者、魔狩人が引きも切らないばかりか、混沌(ケイオス)を信奉する教団の無数とも思われる信徒らが、世間体のよい市民になりすまして伏在している。
こんなありさまでは、悲観した冒険者が世の人々や友達、家族も含めて、自分の敵だと思い込んだとしても無理はない。
「悪意の妄想」に取り付かれたキャラクターは、猜疑心に凝り固まり、しかもその疑念には、何の理由も言われもない。
君はまた、打ち解けにくくなり、訴訟好きで、すぐに腹を立て、ユーモアを解しなくなる。
あらゆる発言やしぐさを観察して悪い意味にとらえ、自分を眨める種にされそうな発言は渋るようになる。
くわえて、たいへん嫉妬深くもなり、親友だと思っていた人々が、こっそり君を裏切ったのだと信じ込むようになる。
「世俗の被害妄想」の患者が、特定グループの者が自分を攻撃しにやってくると思いこむのとは違い、「悪意の妄想」の罹患者は、世界中の誰もがなんらかの方法で自分を攻撃しかねないのだと考える。
ただしそのうえで、いっそう強い敵意を抱いているのは、自分とは異質なやつら(種族や宗教、国籍など)であると考える。
「悪意の妄想」に取り付かれたキャラクターは、ペナルティを災いから逆転させることもある。
「悪意の妄想」を利して、狂信者、魔狩人、決闘者、弁護士、戦闘司祭といったキャリアに転職できた者も数多いからだ。

 

【内なる獣】
ペナルティ:キャラクターの衝動的な行動によりで、パーティーの仲間たちから見捨てられ、果ては犯罪者として追い詰められる結末が待っている。

解説:オールド•ワールドは危険で恐ろしい場所だ。
冒険者は戦闘や殺害や、狂気をまねくほどに衝撃的な光景と出くわすことに明け暮れて日々を送る。
「内なる獣」を患ったキャラクターは、人生のあまりの救いのなさに心の健康が侵され、愛、友情、真実、権威といった概念には何の意味もなく、誰もが無価値で、ただ1つ大切なのは、自分自身が刹那の満足を味わうことだと思うようになるのだ。
「内なる獣」を患ったキャラクターはまた、罪の意識に無頓着になり、後先考えずに行動し、自分についても他人についても身の安全など気にしなくなる。
君はすぐに退屈し、欲求不満に耐えられなくなり。しまいには、横柄で悪意に満ちた嘘つきとなり、利益と快楽のために、虚言を弄するようになる。
言い換えれば、君は欲しいものを手に入れるためには嘘をつき、ごまかし、盗み、拷問や殺人も辞さないようになる。
この精神障害が引き起こす残酷で下劣な行ないは、社会からも法律からも認めてもらえないが、同じ冒険者パーティに属する仲間だって認めはしないだろう。
GMは、この精神障害を負ったキャラクターが冒険者パーティに激変を招くことに注意すべきだ。
もう1つ重要なのは、キャラクター自身は後先考えずに行動するのだとしても、GMは行動の
余波を考えねばならないことだ。
キャラクターはきっと、裏切りをしたり、間違った人物から物を盗んだり、復讐に燃える連中と組んで殺人をしたりして、ある時点で犯罪者になるだろう。
おそらく、残りの人生は個人や組織から裁判や仕返しのために追い回されることになる。
捕まったなら、牢獄や、絞首刑の絞め縄や、その他無数の要因による身の毛もよだつ死に直面することになるだろう。

 

【記憶のナイフ】
ペナルティ:一日が始まった時点(目覚めたとき)で、キャラクターは【意志力】テス卜を行ない、「記憶のナイフ」を隅に追いやれたかを判定する。
テス卜が失敗なら、その日一日は【敏捷力】、【知力】、【意志力】、【協調力】に-10%のペナルティをこうむる。
さらにその日の夜は、ゆがみねじれた奇怪な悪夢をたてつづけに見るために、GMの判断により、次の日の能力値やテストへの追加のペナルティを課してもよいだろう。
また、「記憶のナイフ」の患者は、衝撃的な出来事を鮮明に思い起こさせる事物に出くわした際には、【意志力】テス卜を行なわねばならず、失敗したなら、あの瞬間が再来したのだと信じこんでしまう。
君がどんな反応をするのかは、プレイヤーとGMに任されている。

解説:出来事のなかにはひどく不快で衝擎的であるために、冒険者の心に生涯消えない傷を残すものもある。
「記憶のナイフ」に襲われたキャラクターは、特定の衝擎的な出来事を何度もくり返し夢で追
体験し、強迫観念にとらわれ、突如恐怖に襲われた瞬間に、その出来事が再び起きたのだと考えてしまう。
キャラクターは起きているあいだは出来事の細かな点をくよくよ考え、落ちこんで癇癪を抱えこむ。
くわえて集中力がなくなり、友達や家族を避けたいという衝動を感じる。
夜には、鮮明で超現実的な夢を見て、衝撃的なあの出来事がまた起こるのではという不安に駆られる。
そしてついには、特定の出来事を思い出させる外部からのなんらかの刺激を受けたことをきっかけに、君はあの衝撃的な出来事がふたたび起きたのだと信じてしまう。
例えば、恐ろしさのあまりに走って逃げる、支離滅裂な言葉を叫ぶ、身を隠す、一番近くの人物を攻擎する、絶望にすすり泣く、出来事に応じた行動をとる(負傷した味方を助け出そうとするなど)、目に見えない敵やその他の危険を幻覚で見る、などがある。
公衆の面前でヒステリーのごとくにわめき散らす人物は、間違いなく魔狩人の注意を引くことだろう。
テイーンチの信者たちは、この精神障害にとりわけ大きな興味を抱き、悪魔めいた実験に使うために患者を拉致しようとする。

 

【恐怖症】
ペナルティ:「恐怖症」を患ったキャラクターは、不快症状の対象物を回避しようとする。
自分にとって恐いものにあえて近づく場合には、【意志力】テス卜を行なねねばならない。
失敗したなら、ただちに対象物から逃げ出さねばならない。
逃げ出すのが無理な場合は、次のターンからのテストに【意志力】を半減させて臨む。
くわえてGMは、恐怖症の要因に長時間さらされたことにより、【意志力】テストを行なわせるかどうかを決断しなければならない。
このテストに失敗したなら、キャラクターは【狂気点】を1点獲得する。
キャラクターはテストに成功した場合でも、【意志力】と【協調力】に-10%のペナルティをこうむる、その状態は恐怖症の対象物から安全な距離まで離れるまでつづく。

解説:オールド•ワールドは、肝を冷やす機会に事欠かないが、恐れられるのも至極当然なやつらも実在する。
ビース卜マン(獣人)やミュータン卜(変異種)といった混沌(ケイオス)の信奉者は、君にたいへんな害を与えうる。
恐怖症を患ったキャラクターは、暴力を受けたり、混沌のおぞましさに直面する辛抱たまらぬ生活の果てに、いっそう馬鹿げた恐怖症に屈服し、暗闇、雷、蛇、猫、高所、閉所、橋の
上、といった事物から危害を加えられると信じこんでしまう。
「恐怖症」は、なんらかの物体や状況に対する、過度であらがい難く、精神衰弱をまねく恐れである。
恐怖症の対象はきわめて広範で特定種の動物(ネズミ、蜘蛛、ヒキガエル、馬など)や、広場、閉所、太陽光、暗闇、血液、子供、他民族の人間、水域、群集の中にひとりぼっちでいること、髪の毛、毛皮と衣類、植物、鋭く尖った物、魔法使い、聖職者、医者など、枚挙に暇がない。
より深刻なケースでは、「恐怖症」の患者は、恐怖症の対象物がそこいらじゅうに隠されており、目に見えないところで、隙あらば出現しようと機会を窺がっているのだと信じ込む。
ネズミから逃げ回り、針がそこいらじゅうに転がっていて自分を突き刺そうとしているとわめき散らすような行動は、必ずや魔狩人の注意を引きつけるだろう。

 

【腐りゆく肉体】
ペナルティ:キャラクターは、己が身体の造反は他人の目にも明白だと考えるため、社交的な状況では-10%のペナルティを【協調力】にこうむり、大規模な集会やパーティ、重要人物や見知らぬ人との会合といった状況では、-20%のペナルティを【協調力】にこうむる。
さらに、面識のない相手と会う際には【意志力】テス卜を行なわねばならず、失敗したなら、身の毛のよだつ外見のせいでひどく見られてしまったという先入観で落ち込んでしまう。

解説:冒険者には多大な時間を、下水道や朽ち果てた城塞、ゴブリンの洞窟といった胸くその悪くなるような場所で過ごさねばならないことがある。
そればかりか、不潔にして不快至極な混沌(ケイオス)の手先と乱暴なまでの身体的接触をかなり頻繁に持たねばならない懸念もある。
そうしたあらゆる腐敗に浸かっていることは……身体への影響はないと言えるのか?キャラクターの皮廣やロや鼻から入った腐敗が、肺や内臓や脳を侵し、黒く腐敗させ、耐えがたい悪臭を放ち、地を道う昆虫をひきつけて、水ぶくれや、おそましい焼けつく発疹をまねき、ことになると、より深刻な奇形を招くということも、あるいは…。
「腐りゆく肉体」を患ったと信じこんだキャラクターは、自分の身体にひどいことが起きたとの先入観のもとで行動する。
現実には、どこも悪いところはなくてもだ。
ただし、キャラクターが手足や眼を失っていた場合には、往々にしてそれが問題の根なのだと思い込んでしまえだろう。
キャラクターが具体的にどんな身体の不調を思い込むのかは、GMの判断に任されている。
例としては、不快な体臭、発疹、水膨れ、奇怪な痣、腫瘍、空想上の蟲が皮下や髪の毛に寄生した、頭部の変形、四肢の変形、身体の一部が腐りはじめるorグロテスクなまでに肥大する、などがある。
「腐りゆく肉体」の患者は、想像上の症状の治療法を探すことに多大な時間を費やす。
あらゆる医者を訪ね、もう元には戻れないのだと悲親する。
身体におかしなことが起きていると語る者が、魔狩人や狂信者の情け容赦ない反応を招くことは疑いない。
ちなみに、ナーグルの信者のなかにはこの精神異常に興味をかき立てられ、邪悪な宗教儀式に用いるために患者を拉致しようとする連中もいる。

 

【狂おしい渇き】
ペナルティ:毎日の【意志力】テストや突発的に訪れる【意志力】テストに失敗し、1度飲むたびにキャラクターの【意志力】は5%ずつ低下し、そのため欲求にあらがうのがますます難しくなる。
長期間にわたるアルコールの乱用は、心と身体に大きな負担をかける。
キャラクターが中毒になってから6力月が経過するごとに、【筋力】、【頑健力】、【敏捷力】、【意志力】、【協調力】が、10%ずつ失われる。

解説:キャラクターは、恐れや不安、絶望や狂気といった感情を麻痺させるため、アルコールに逃げこむ。
それでも毎日、あともう1杯飲まない限りは悪夢を抑え込めない気がしてならない。
君はやがて中毒になり、起きている間は、いつどこでどうやって次の酒にありつけるのかという思いに支配されて不機嫌に過ごす。
そしてひとたび貴重な液体にありついたなら、意識を失うまで飲みつづける。
キャラクターは毎日、悪魔の水の誘惑にあらがうために【意志力】テストを行なわねばならない。
失敗したなら、どんな手段に訴えてでもアルコールを手に入れて飲む。
テルビン油のような、臭くて有害なものであろうと構わずに飲む。
アルコールが入手できない状況でキャラクターが【意志カ】テス卜に失敗したなら、-10%のペナルティが【知力】、【意志力】、【協調力】に課せられ、その状態はアルコールを含有した何かを見つけて飲むまで続く。
アルコールにありつけば、属性は平常に戻るが、【意志力】のみは例外である。
また、毎日の【意志力】テストの成否とは別に、酒を飲める状況が訪れた場合にはいつでも(酒場の前を通りかかったなど)、キャラクターは別途に【意志力】テス卜を行ない、突然訪れた「狂おしい渇き」にあらがえたかを判定しなければならない。
上記のいずれのケースでも、テス卜に失敗したなら、キャラクターは酒が無くなるか、【意志力】テストに成功するまで飲み続ける。
「狂おしい渇きき」に苛まれたキャラクターは、やがては、混沌の神スラーネッシュとその手先の誘惑にとりわけ脆い存在と化してしまう。

 

【恋わずらい】
ペナルティ:妄想にとり憑かれ、奇行に走り(本人はいたってまじめだが)、仲間や近しい人々、恋をしている相手に迷惑をかけてしまう。
「恋わずらい」の相手が大人物であればある程、自身への危険が増すことだろう。

解説:冒険者の人生は、残酷で苦悩に満ちている。
肉体は切られ、押し潰され、精神もまた、神への冒浣と恐怖に満ちた光景に絶え間なく襲われている。
ならばいったい、愛はどこにあるのか?
「恋わずらい」を患ったキャラクターは、誰かから熱烈に愛されているという妄想のもとで行動するようになる。
その相手は、より身分が高く有名人でさえあるのが通例だ。
貴族、名高い大道芸人、有名な商人、弁護士、聖堂騎士、魔術師、司祭などは、いずれも妄想の対象の好例である。
場合によっては、キスレヴの氷の女王や、帝国皇帝カール・フランツから寵愛されていると思い込む者すらいるだろう。
妄想の相手は、君のことなど知りもしないのが普通で、愛してなどいるはずもないのだが。
「恋わずらい」を患ったキャラクターは、妄想の相手とお近づきになるためにはどんな手でも試みる。
ひどく迷惑なラブレターを送ってみたり、相手の一挙一動を見張ったり、不適当な愛の告白をして相手を困らせ、ここまでの気持ちを突っばねるのかと不穏当な態度で暗に脅したりする。
「恋わずらい」を患ったキャラクターは、相手から秘密のメッセージを受け取ったと思い込む。
それには手紙(もちろん、目に見えないインクで書かれたもの)や、空想上の腹心らによる遠まわしの示唆、公の声明に隠された秘密のメッセージ(書面か演説)、流行歌や演劇、人形劇などの文句に隠されたとっぴな暗号などがあり、ひどい場合には魔法による一種のテレパシーということもある。
媒体がなんであれ、メッセージの内容は1つだ「愛しています。あなたは理想の人です。たとえどんな困難があろうとも、私たちは一緒にならなければなりません」。
地位の高い人や著名な人は、武装した用心棒に囲まれており、危険人物に対してはことに気短かである。
社会における重要人物に嫌がらせをすることは、多くの警備隊長から犯罪行為だと見なされる。
奇妙なふるまいを続けていれば、冒険者パーティの仲間たちの信頼も失うだろう。
有名人から愛を告白する秘密のメッセージを受け取ったと吹聴する、というような狂気の兆候をあらわにしたなら、君は魔狩人から目をつけられるに違いない。

 

【幸運の奴隷】
ペナルティ:「幸運の奴隸」を患ったキャラクターは賭博をする機会に恵まれたなら(路上でサイコロ勝負が行なわれている脇を通り過ぎたり、酒場でトランプに誘われたり、など)、誘惑にあらがうために【意志力】テストを行なわねばならない。
テストが失敗だったなら、キャラクターは賭け事に没頭し、新たな賭けが行なわれるごとに【意志力】テストを行なって、誘惑にあらがえたかを判定しなければならない。
くわえて、キャラクターは勝敗に関わらず、新たな賭けに参加するごとに【意志力】が5%ずつ低下する。
〈賭博〉技能があったとしても、このペナルテイはなくならない。
当該技能は賭けに勝つために役立つに過ぎないためだ。

解説:キャラクターは「幸運の奴隸」になると、賭け事がしたいという猛烈な欲求に四六時中、襲われる。
しまいには、平凡な生活など退屈で気がめいるだけで、無数の些細な卜ラブルの連続であるうえに、かつて目の当たりにした恐怖の記憶に苦しめられるばかりだと思いつめるようになる。
君はもうじっとしていられず、ちよつとしたリスクのスパイスでじれったい時間の進行を速めたくなり、運試しのゲームに目を向けると、たちまち誘惑に負けてしまう。
キャラクターが賭けに負けて、金を使い果たしたうえで【意志力】テストに失敗した場合、金を借りるか、個人的なアイテムを賭けるかして賭博をつづけねばならない。
これは、複雑で危険をはらんだ状況を招きうる。
「幸運の奴隸」のキャラクターはほとんど常に借金を背負い、金を回収しようという連中からしつこく追い回され、しばしば法律を踏み越えてしまう。
友達から多額の金を借りて、びた一文返さないことで、たちまち友達も失ってしまうだろう。
それどころか、自分のものですらないアイテムや、冒険者パーティの共有物(舟など)までを
も、許可も得ずに賭けるようになる。
後はもう滑りやすい坂道が、致命的な嘘や、明白な窃盗、あるいは、スラーネッシュとその手先が君を抱きとめようと手を広げて待ち受ける場所へと、続くばかりだ。

 

【じっとしていない指】
ペナルティ:窃盗が行なえる状況が訪れたなら、キャラクターは衝動を抑え込むために【意志力】テストを行なわねばならない。
テストに失敗したなら、君は窃盗にともなう危険も、後先も考えずに、何かを盗もうとする。
なお、キャラクターは窃盗行為そのものに価値を見出すため、盗み取ろうとする物品の価値は二の次となる。
盗みを働くと、キャラクターは一時的に光り輝く高揚感につつまれるが、1d10時間が経過すると、罪と恥の意識に執拗に苛まれる。
そのため、1d10日にわたって-10%のペナルティを【協調力】にこうむるが、キャラクターが他のアイテムを盗むことに成功した時点で、このペナルテイは解消する。

解説:オールド•ワールドの冒険者の人生は変転著しい。
退屈なひと時が血も凍る阿鼻叫喚へと一変することもありうるのだ。
キャラクターの日々の暮らしがいかに平穏無事であろうと、つねに殺害される危険はついて回る。
たちの悪い人間、ミュータント(変異種)、ビーストマン(獣人)、 ないし それ以上におぞましい存在が、 まったく 予測不可能な偶然の瞬間に襲いかかるのだ。
かように魂消える瞬間を待ち続けていては、苦悩も募り募っていくものだ。
君の内面にわだかまった不安感は、いつしかはじけて猪突猛進かつ危険でもある窃盗行為を引き起こす。
「じっとしていない指」を患ったキャラクターは、抑えがたい窃盗への衝動に苦しむと同時に、確実に多くの者を敵に回すことになる。
商人や法の番人、そしておそらくは友人をもだ。
加えて、混沌の神スラーネッシュとその手先の冒浣的な欲望のはけロにもされかねない。
ハーフリングは、とりわけこの精神疾患を患いやすいが、もちろん、彼らはそれを否定している。

 

【世俗の被害妄想】
ペナルティ:「世俗の被害妄想」を患ったキャラクターは、自分を苛むと思いこんだグループに属する者に出くわした際には、【意志力】テストを行なわねばならない。
そして失敗したなら、その者が近くにいるせいで見境のない行動を始めてしまう。

解説:「世俗の被害妄想」を患ったキャラクターは妄想にとらわれ、まだ直面したことのない見えざる敵が、多くの場合は自分にとっての友人や家族、恋人と共謀して、自分を貶め、しまいには殺そうと策を練っているのだと思い込み、その先入観のもとで行動するようにな
る。
その敵は、驚くべき力と悪魔めいた心をそなえ、昼夜を分かたずキャラクターを監視でき(しばしば、巧妙な方法で)、秘密の卜ンネルや通路を作って君の宿に忍び込み、食事や飲み物に薬物や毒を入れ、部屋に踏み込んで持ち物を勝手にいじりまわし、君の鼻先で貴重品を盗んでいき、血や傷口に吸いついて君を腑抜けにし、君に呪文をかけ、獣めいた行為をせずにはいられなくさせ、精神を乗っ取ってしまう。
ちなみに敵は、通常は1つのタイプからなる。
たとえば、エルフ、ドワーフ、ハーフリング、 ミュータン卜(変異種)、ビース卜マン(獣人)、スケイブン、リザードマン、ゴブリン、魔術師、混沌(ケイオス)の信奉者、キャラクターが信仰する神以外の信奉者、聖堂騎士、魔狩人、ドルイド僧、医者などである。
【意志力】テストに失敗したとき、キャラクターが現実にとりうる行動は、プレイヤーとGMに任されている。
例えば、恐怖のあまりに絶叫する、走って逃げる、隠れる、相手を口先でor本当に攻撃する、泣き崩れる、恐れて縮こまる、などがある。
陰謀や、見えざる敵といったたわ言をくり返すことは、まぎれもない狂気の証である。
「世俗の被害妄想」を患ったキャラクターは、現実の虐待を魔狩人から受けることにならぬように、注意しなくてはならない。

 

【絶望的な運命】
ペナルティ:世界の終焉に頭の中が支配されてしまい、周囲はもちろん、自身をも省みずに人々に贖罪をもとめ、終末を流布してまわる。
気が狂った狂人のレッテルを貼られ、人は近寄らず、戦争では利用される存在となる。

解説:混沌(ケイオス)の勢力はどこにでもいて、執拗にオールド•ワールドを外側からは攻め、内側からは腐敗させている。
冒険者は、やつらとの戦いにどっぷりと浸かっており、終わりなき絶望的な戦いを続けねばならない。
それでも多くは、歯軋りをしながら、自分たちの生き方を断固守り抜こうと、どれほど絶望的な結果が待っていようとも戦う。
だが一方で、単純にあきらめてしまう人々もいる。
キャラクターが「絶望的な運命」に駆られる理由は、暴力や恐怖に絶え間なくさらされたことで、壊れやすい精神が少しずつ損なわれ、とうとう弾けてしまったことによる。
正気が永遠に去っていく瞬間に、君は妄想によるひらめきを得る。
強力な神格(シグマーのような)がついに、真実を見せてくれたのだと信じ込む。
「世界は、黙示録的な終焉に近づいており、それを止めるすべはない。いまは悔い改めて死すべき時だ」と。
「絶望的な運命」を患った多くの者は、深い洞窟や人気のない森林へと身を隠しにむかう。ただしなかには、自分は神の特使として聖別され、この世の終わりが近いことを人々に説かねばならないと信じ込む者もいる。
彼らは、ぼろを着た穢らしい姿で、町の広場や四辻に立ち、オールド•ワールドの終末の日々について布教活動を行なう。
「絶望的な運命」を患ったキャラクターは、世界の終わりのことを民に伝えよと! 神から頻繁に指示されていると信じ込む。
他の一切のことはどうでもよくなり、金銭を得ることにも、食事や洗濯をすることにも無頓着になる。
神のメッセージがどんな方法でキャラクターにもたらされるかの判断は、GMに任される。
頭の中で声がする、光景が見える、象徴的な夢を見る、といったものや、それらの組み合
わせが考えられる。
メッセージは常に緊急で、強力で、希望のないものだ。
たとえば、次のような内容だ「世界の終わりが近づいた。罪を悔い改めよ。終末の日にむけて、おのれを洗い清めよ」。
「絶望的な運命」の患者は、この世の終末に備えるために、おのれの罪を悔い改めるだけでなく、身体と心を清めることもせねばならない。
君に言わせれば、懺悔と清めのための最良の行為の1つが、自傷行為だ。
最も一般的なやり方は、鎖や鞭、ロープ、鋲つきの革紐などを打ちつけて肉体から皮をはがすことである。
また、他の連中を贖罪に加わらせることも、君にとっては厳粛な責務のひとつだ。
将軍や、魔狩人や、戦闘司祭のなかには、来るべき戦いのために、「絶望的な運命」の患者を軍勢に引き入れる者もいる。
彼らは、憐れな精神障害者にむかって、最後の戦いは間近に迫っており、栄えある死が約束されると説くのだ。
現実には、「絶望的な運命」の患者は、注々にして砲弾の露払いとして使われ、第一線に配置されて敵を苦しめてから、陰惨な死を遂げるのだ。
患者は鞭打苦行者らの部隊に配属されることがとりわけ多い。

 

【絶望の心】
ペナルティ:この精神障害のせいで、キャラクターは永続的に1d10の【協調力】を失う。
くわえて、【狂気点】を1点獲得するごとに【意志力】テストを行なわねばならず、失敗したな
ら2d10日にわたって世間から隠れて過ごす。
この期間中、君は外出を拒み、行動を改めさせようとする者には身をよじって抵抗する。
「絶望の心」を患ったキャラクターは、6点の【狂気点】を追加で獲得した時点で、【意志力】テストを行なわねばならない。
失敗したなら、他の精神障害を獲得する代わりに、自死を試みる。

解説:「絶望の心」を患ったキャラクターは、自分が価値のない人物で、何ひとつ上手くやれないし、始終逆風の吹ける世界では生きていけないとの思いこみの元に行動する。
何をやってもどうせ失敗するからと、状況を改善できるという希望を、見る見るうちに失ってしまう。
かつては楽しみだった物事も今では何の意味ももたず、君は友人や家族を避けるようになる。
「絶望の心」はまるで、悪意ある錨のごとく君にのしかかり、しまいに君は、この苦しみから逃れるためには自ら命を絶つしかない、と思いつめる。
「絶望の心」を患ったキャラクターは、きめて扱いにくい。
どうやっても元気づけることはできないし、ひどく塞ぎこんでいるために、まわりの気持ちまでも暗くする。
【狂気点】が新たに6点累積した君は、新しい精神障害を獲得する代わりに、自死を選択し、自殺願望に取りつかれて、なるだけ早く実行に移そうとする。
止めようとする他人が周りからいなくなる瞬間を狙って、ほぼ確実に死ねる方法を選んで実施するのだ。
自死は、オールド•ワールドでは違法ではないが、君が自殺を試みたなら、友達や家族や地域の聖職者はひどく心配するだろう。

 

【譫妄状態の救世主】
ペナルティ:自身の特殊能力を信じて疑わず、自分こそが救世主たりえるという妄想に支配される。
そのような行動のせいで、人々からは狂人扱いされ、かつての親切な隣人たちも距離を置きはじめる。

解説:「譫妄状態の救世主」に取りつかれたキャラクターは、特別な見識や各種能力を授かったという妄想のもとで動くようになる。
そのため、たとえば以下のように信じ込む。
「身の毛のよだつビーストマン(獣人)どもの攻撃をこうして生き延びられたのは、いずれかの神格から選ばれたからであり、自分は、カブ(野菜)を黄金に変えることで衆生の苦しみを終わらせる使命を負っている。
そしてもしも、授かった見識や各種能力を行使することが許されたなら、自分は奇跡的な行為を実現させて、世界をより良くすることができる」と。
キャラクターが授かったと信じる特別な見識や各種能力がどんな種類のものかは、GMの判断に任されている。
見識の例としては、あらゆる病を治療する方法、世界から貧困を一掃する方法、ミュータン卜(変異種)を浄化する方法、飢えた人々を食べさせる方法、戦争をなくす方法、金銭を廃止する方法、などがある。
キャラクターはそうした問題について、奇抜で大げさで非現実的でばかげた考えを、聞く者がいたならくどくどとしゃべり続ける。
また、その問題について長ったらしくて支離滅裂な論文を書き連ね、できることなら出版しようとする。
各種能力の例としては、上記の全てを手を触れただけで行なえる、呪文を発動できる、超能力(読心術、念力放火、テレパシー)が行使できる、水の上を歩ける、空を飛べる、決して傷を負わない、驚異の機械装置を発明できる、といったものがある。
君はそうした能力を固有能力として得たものと信じ、つねにその前提のもとで行動する。
たとえ、そんな力など一切ないという動かぬ証拠を突きつけられてもだ。
特別な能力を授かったと信じこんだ人物は、往々にして狂人と見なされる。
支離滅裂な言説を憑かれたように述べつづける人物も同様である。
いずれのタイプも、おのれの精神障害が招いた結果として、しばしば危険な状況に直面する。
ただしなかには、やはり気がふれてから長い時をへた不運な輩が多いのだが、妄想に支配された探索行のなかで、「譫妄状態の救世主」にそろそろと付き従う人々もいる。

 

【戦慄と愉悦のルーレット】
ペナルティ:冒険が始まった時点でのキャラクターの気分を決めるために、1d10をロールし、1〜5なら、ルーレットの目は「愉悦」に1d10日にわたって留まってから、次の1d10日間は「戦慄」のほうにふれる。
6〜10なら、1d10日間の戦慄につづいて、1d10日間の愉悦となる。
以下同様に、キャラクターの気分の変わり目ごとに1d10をロールして判定し、精神障害が治癒するか、キャラクターが死亡するかしない限りはそれをくり返す。
「戦慄」なら【敏捷力】、【意志力】、【協調力】に-10%のペナルティ。
「愉悦」なら【敏捷力】に+10%のボーナス、【意志力】、【知力】に-10%のペナルティ。

解説:「戦慄と愉悦のルーレット」を患ったことに気づいたキャラクターは、もはや日常生活で、気分や感情のゆらぎをコントロールできなくなる。
君の気分は、目のくらむほどの高揚感から、正反対の深い絶望へと絶え間なく変転しつづける。
ルーレッ卜が「愉悦」を示した時には、キャラクターは信じがたいほどのエネルギーに満ちあふれ、何日間も眠らないことも珍しくない。
落ち着きを失って衝動的になり、きわめて高額なアイテムに乏しい金を浪費し、判断力が働かなくなり、人前で不適切な行動をとり、自分にはできないことはないのだと思い上がる。
法に抵触し、借金を抱え、愚かしいことをやらかしてひどい目に遭い、場合によっては怪我を負わされたり殺されたりもする。
この状態では、【敏捷力】+10%のボーナスを得るが、逆に【知力】と【意志力】に-10%のペナルティをこうむる。
ルーレットが「戦慄」を示した時には、キャラクターは往々にしてベッドから出ることも拒むようになり、惰眠をむさぼるのだがそれでも疲れが抜けない気がして、脈絡もなく突然泣き崩れることもある。
仕事に興味を失い、家族や友達を避け、自分には希望も価値もないと思いつめて、強烈な自殺願望に取りつかれる。
慰めの言葉も君には届かず、そればかりか、世話を焼いてくれる人を追い払うことも珍しくない。
やる気に欠けるために冒険者としては役に立たず、そればかりか、いつ橋から飛び降りるかも分からないのだ。
この状態では、【敏捷力】、【意志力】、【協調力】に-10%のペナルティが課せられる。

 

【脳炸裂
ペナルティ:1ヶ月に1度の病状回復【知力】テストに成功すると、記憶が戻る。
失敗すると【狂気点】を1点獲得。
「脳炸裂」になるきっかけを思い出す場合は、解説を参照。

解説:冒険者は極度に恐ろしい光景を目撃することがあり、そうなると心は、木の枝のように折れてしまわないよう、記憶を完全に封印してしまう。
かように激烈な体験には大きな代償がともない、キャラクターは突如として、一切の記憶をなくしてしまう。
自分の過去や、自分が誰であるかすら分からなくなってしまうのだ。
「脳炸裂」を患ったキャラクターは、完全に記憶をなくしてしまう。
自分の名前も、来歴も、呪文も一切思い出せない。
技能と異能は失われないが、他人から教えてもらわない限りは、それが使えることを忘れてしまっている。
また、「脳炸裂」の患者がその要因となった特定の出来事を思い出そうとするときには、【意志力】テストを行なわねばならず、失敗したなら1点の【狂気点】を獲得する。
「脳炸裂」の患者はまた、トラウマの元凶である出来事にはっきりと関連した物や人物に出くわした際には、【意志力】テストを行なわねばならず、失敗すると1点の【狂気点】を獲得する。
しかしその後で、【知力】テス卜を行なうことができ、成功したならその瞬間に関連する詳細を思い出せる。
「脳炸裂」を患うことの負の側面は明白だ。
だが君にとってもう1つの危険となるのは、ティーンチの信者たちだ。
彼らは「脳炸裂」を、奇怪な神ティーンチからの贈り物だと考えており、邪悪な研究を行なうために、患者を探しているからだ。

 

【栄えある腐敗】
ペナルティ:下記の通り。
・最初の1週間-ランダムな能力値に-10%のペナルティ。
・8日目以降-永続的に【協調力】-10%と奇妙な思考。
・1ヶ月以降-幻覚や幻聴。
・2ヶ月以降-全ての能力値に-10%のペナルティ。【協調力】にはさらに-10%のペナルティ。毎日【頑健力】テストをして、失敗したら、ミュータント化。
・3ヶ月経過しても生きているなら、毎日【頑健力】テストを行ない、失敗すれば、ホラー・オブ・ティーンチになれる!

解説:ワープストーンや、その他の形態による混沌(ケイオス)のエネルギーにさらされることは、絶対によくない。
混沌は肉体を突然変異させるだけでなく、心弱き者の精神をねじ曲げてしまうのだ。
混沌が脳を突然変異させえたなら、その成れの果てが「栄えある腐敗」である。
「栄えある腐敗」を患いうるのは、6点以上の【狂気点】をもちながら、まだ精神障害に罹患していないキャラクターである。
そうしたキャラクターが混沌のエネルギーに触れたなら、ただちに【意志力】テストを行なわねばならず、失敗したなら感染してしまう。
その場合、6点の【狂気点】は解消できるが、精神は、「栄えある腐敗」に蝕まれてしまう。
患者は当初は、毎日-10%ずつのペナルティをランダムにいずれかの能力値にこうむる。そして1週間が過ぎると、キャラクターは永続的な-10%のペナルティを【協調力】にこうむり、奇妙な考えを抱きはじめる。
たとえば、入浴は死を招く、全ての金銭は贋物である、動物たちは密偵として自分を監視している、睡眠は愚か者のすることだ、ポケットに排泄物を入れておけばエルフを遠ざけておけるなどだ。
1ヶ月が経過すると、君は幻覚を起こしはじめる。
幻覚は主に、視覚か聴覚の形態をとる。
キャラクターの目や耳には、普通の物がありえない色彩に変わり、生命をもたない物体が動き、視界から微妙に外れたところにおぼろげな人影が潜み、動物が言葉をしゃべり、宗教画が突如として様々な物体や空に重なって写り、といったことが把握できる。
聴覚における幻覚には、君の背後の足音、空気が抜けるようなor羽のうなりのような音、人の話し声などがある。
声は常に命令口調で、特定のことを実行せよと告げる。
世界の終わりがやってくると皆に告げよ、徴税官は混沖(ケイオス)の手先であるから殺害せよ、などである。
声がどこから聞こえてくるように思われるのかは、GMの判断に任されている。
2ヶ月が経過すると、いっさいが現実に坂道を転がりはじめる。
キャラクターは-10%のペナルティをあらゆる能力値にこうむり、【協調力】にはさらに-10%のペナルティをこうむる。
君は毎日【頑健力】テストを行なわねばならず、成功しない限りミュータン卜(変異種)と化してしまう。
テストが失敗しなら、突然変異はゆっくりと進行し、眼からロ、頭へと進む。
ひとたび突然変異が始まったなら、毎日の【頑健力】テストは、3ヶ月が経過するまでは必要なくなる。
3ヶ月が経過して、まだ生きているのなら、君は毎日【頑健力】テストを行ない、ホラー・オヴ•ティーンチへと変貌するのを防がねばならない。
テストに失敗したなら、精神の最後の名残までもが破壊され、ひと目見たなら阿鼻叫喚せずにはいられぬ変化が肉体に生じる。
身体の裏表がめくり返って無数の手や足やロが生えてくる程度なら、珍しくもなんともない。キャラクターは混沌のディーモン(悪魔)へと変化したのであり、プレイヤーの支配下から離れる。
魔狩人やティーンチの信奉者らは、「栄えある腐敗」の患者たちを見つけだそうとやっきになっている。

 

【フィーンドの宿主】
ペナルティ:毎日の【意志力】テストで失敗するとディーモンに身体を乗っ取られ、ランダムな性格へと豹変する。
狂気点を積み重ね、6点以上獲得すると、ディーモンに完全に身体を乗っ取られて、レルム・オブ・ケイオスへとキャラクターの魂を送ることになるかもしれない。

解説:斃されたデイーモン(悪魔)は、全てが全て、混沌の領域(レルム•オヴ・ケイオス)へと帰っていくわけではない。
条件さえ整ったなら、彼らは実体をもたないがゆえに、無用心な定命の者を宿主として、その脆弱な精神を居場所にさだめてしまう。
キャラクターは、「殺されたばかりのディーモンと同じ地点にいて、6点以上の【狂気点】を有しているが、他の精神障はまだ獲得していない」という条件がそろったなら、「フィーンドの宿主」を患う可能性がある。
斃されたディーモンは、キャラクターの心が弱いとを感じとって、精神に入りこもうとする。
それを食い止めるために君は【意志力】テストを行なわねばならない。
キャラクターがテス卜に失敗したなら、ディーモンが強引に精神に侵入するため、6点の【狂気点】を解消できる。
ただし、ここで注意すべきは、ディーモンが侵入に成功しようがしまいが、君には何があったのかさっぱり分からないということだ。
そのため、「フィーンドの宿主」を患ったキャラクタ一は、突如人格が変わったことについて、最初のうちはきちんとした説明が思いつかない。
ディーモンはひとたび侵入したなら、君の精神と肉体の統制をもぎとろうと日々格闘する。
そのためキャラクターは、毎日【意志力】テス卜を行なわねばならない。
テス卜に失敗したなら、ディーモンは強力な影響を、君の思考や行動に及ぼしはじめ、人格までをも劇的に変えてしまう。
ディーモンは混沌のクリーチャーであるため、混沌の邪悪な4つの神格「コーン、スラーネッシュ、ナーグル、ティーンチ」の相を持ち合わせる。
ロールを行なって表と対照し、ディーモンのどの相が、腹黒い支配を及ぼすのかを決定すること。

ロール 結果
01~25 コーンの相:キャラクターは気短で、暴力的で、議論好きで、人をさげすみ、血に飢えて、加虐的で、残忍になる。
そのため、【協調力】に-10%のペナルティをこうむる。
26~50 スラーネッシユの相:キャラクターは自己愛に陶酔し、自分勝手で、快楽主義に陥る。
そして酒を飲み、嘘をつき、賭博や盗みに手を染めて、肉体的快楽を追及する。
そのため、【意志力】に-10%のペナルティをこうむる。
51~75 ナーグルの相:キャラクターは身体を洗うことを拒み、腐った食べ物だけを食べ、かさぶたや傷口をつつき、昆虫や吐瀉物をいじくり、病気の者を探し、汚穢のなかで転げまわる。
そのため【協調力】に-20%のペナルティをこうむる。
76~00 ティーンチの相:キャラクターは髪を切り、新しいスタイルの服を着て、違った声で話し、心配する者を冷淡に無視し、新しいキャリアを探し、それまでの人生を認めようとしなくなる。
そればかりか、地獄の言葉や行ないで現状を変えなければと一途に思いつめる。
この相は、眠っているときでさえも忘れずに、邪悪な計画を機会があるときには執拗に実行しようとする。
そうして取りつかれ、謎に満ちた二重生活を送るようになったキャラクターをNPCとして扱うかどうかは、GMが決めてよい。


ディーモンのいずれかの相は、1d10日にわたってキャラクターを支配する。
新しい日がはじまるごとに、キャラクターは【意志力】テストを行なうことができ、成功したなら精神と肉体の支配を取り戻せる。
その相の影響が終わった時点で、キャラクターは平常の状態に戻る。
ただし、次の日の朝にはまた、毎日の【意志力】テストを行なって、ディーモンを追い出せたかを判定しなければならない。
「フィーンドの宿主」を患ったキャラクターがさらに【狂気点】を6点獲得して、さらに【意志力】テストに失敗した場合、他の精神障害が適用される代わりに、君は肉体と精神を完全にディーモンに乗っ取られてしまう。
キャラクターの魂は、混沌の領域へと消え去るのだ。

 

【放火魔】
ペナルティ:【意志力】テストに失敗すると放火してしまう。
1d10時間の愉悦の後、1d10日間の意気消沈期間は【強調力】-10%。
そんなペナルティよりも、放火罪は即座に死罪となるため、絞首台に吊るされ、キャラクターがロストするペナルティーが大きい。

解説:キャラクターは、火をつけたいという抑えがたい欲求にとらわれる。
所詮人生は不幸と暗がり、恐怖と危険に神経をすり減らすことが永速に続くだけだと思い込むまでに君は追いつめられる。
君には何の喜びもなく、真の楽しみは何からも得られない。
猛烈な炎を起こして建物を焼き尽くすことを、唯一の例外として。
「放火魔」のキャラクターが放火の機会に恵まれたなら、狂おしい衝動に抗するために、【意志力】テストを行なわねばならない。
失敗したなら、キャラクターは放火を試みる。
身の危険や、起こりうる事態のことなど考えもせずに。
放火してめらめらと昇る炎を見つめるうちに、キャラクターは目くるめく快感と甘美な安堵感に包まれる。
炎がより盛大であるほど、愉悦もさらに増す。
この有頂天の状態は1d10時間にわたって継続するが、その後、キャラクターは意気消沈して神経質になり、1d10日にわたって【協調力】に-10%のペナルテイをこうむる。
ただしその間に、放火をする機会に恵まれたのなら話は別だが。
「放火魔」は、火をつけるたびに自分はおろか他人の命までも危険にさらしている。
君が起こした火災で丸焼けになって死亡した者も数多い。
また、放火罪はオールド•ワールドでは死をもって報いられるため、放火魔は絞首台の絞め縄によって命を落とすこともありうる。
スラーネッシュとその手先は放火魔をたいへん好む、火をつけねばという君たちの切迫感は、混沌(ケイオス)による終局的な腐敗へといたる経路の戸口たりうるからである。

 

【冒涜的な憤怒】
ペナルティ:キャラクターが何かの場面で【意志力】テストの機会をえた場合、その結果に関わらず、追加で【意志力】テストを行ない、失敗したなら、制御不可能な憤怒と暴力の発作を発する。
怒りの発作は2d10Rにわたって持続し、その間キャラクターは【武器技術度】、【射撃技術度】、【知力】、【意志力】、【協調力】に-10%のペナルティをこうむる。

解説:冒険者の生活には、金銭や名声や、文明の敵を斃した満足感といった見返りがある。だが、負の側面もある。
まず、つねに突然変異や死の脅威にされていること。
次に、混沌(ケイオス)の軍勢のことを深く知るにつれて、やつらが正視しえぬほどおぞましくいたるところに存在し、おそらくやがては、世界を破滅させるに違いないと勘付いてしまうことである。
「冒浣的な憤怒」を患ったキャラクターの内面で、上記の負の側面によって募りゆく不安は、やがては爆発して、荒々しくて制御不可能な憤怒と暴力の発作となる。
またその間は、神々を冒涜する卑猥な言葉を叫びながら、物を叩き壊し、人を無作為に攻撃する。
たとえ友達であってもだ。
キャラクターは、みずから「冒洗的な憤怒」の発作を起こすことはできないし、猛り狂っていることは、戦闘には一切有利には働かない。
じっさい、キャラクターは圧倒的な怒りで周りが見えなくなっているため、行動は常軌を逸して、粗雑で不注意になる。
平静な心を失っているので、戦いぶりはさながら酔っ払った異常者なのだ。
「冒涜的な憤怒」を患ったキャラクターはどこかの時点で、気がつけば法を犯していることだろう。
そればかりか、気味の悪い、信用ならない相手だと決められてしまうだろう。
神々を大声でののしったり、不用意に神の名を用いる者は、よくよく注意しなければならない。
どこで誰が聞いているか分からないからだ。

 

【マンドレークの男】
ペナルティ:毎日、マンドレークへの抑えがたい渇望にあらがうために、【意志力】テストを行なわねばならない。
失敗なら、君はどんな手を使ってでも(法に抵触する行為や、それ以上に悪辣な手段に訴えてでも)1服分を入手しようとし、手に入ったならただちに摂取する。
マンドレークの根の影響を受けたキャラクターは、けだるい気分のせいで毎ラウンドに1回の半ラウンドしか行動できない。
ただし、「恐怖」と「恐慌」のテストに+20%のボーナスを得られるという利点もある。
服用による効果が消えた時点(1d10時間後)で、キャラクターは再度、-10%のペナルティを受けたうえで【意志力】テストを行なわねばならず、失敗したなら、ただちにもう1服分を摂取せずにはいられなくなる。
マンドレークの根が入手不可能な状態で【意志力】テストに失敗したキャラクターは、【知力】、【意志力】、【協調力】に-10%のペナルティをこうむり、その状態は、この薬物が摂取できるまでつづく。
1服分を摂取すれば、マンドレークの根が有効な間は、キャラクターの気質は通常に戻る。
マンドレークの根の長期間にわたる乱用は、キャラクターの肉体と精神を蝕み、いっそう心の変調を起こしやすくしてしまう。
そのため、この薬物の中毒になってから6力月が経過するごとに、キャラクターは永続的に【筋力】、【頑健力】、【敏捷力】、【知力】、【協調力】から10%を失い、【意志力】からは15%を失う。

解説:キャラクターは、マンドレークの根と呼ばれる意識混濁作用のある薬物を用いれば、アルコールよりもずっと効果的に痛みを麻痺させられることを知る。
この薬物を1服分摂取したなら、キャラクターはゆったりした気分で眠くなり、傷の痛みが取り払われ、暖かくてもやもやとした気分でいられる。
しかしながら、この邪悪な薬物は1服分だけでひどい中毒症状を引き起こす。
不幸にも、キャラクターは薬物を必死に探し求めるなかで、たいがいは非合法活動へと堕し、法律はもとより、友達や家族をも敵に回してしまう。
ちなみに、「マンドレークの男」はとりわけ、混沌の神スラーネッシュとその手先による悪魔的な快楽の虜になりやすいことも、付け加えておこう。

 

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