混沌とは
ウォーハンマーRPGの世界観を語る上で避けて通れないのが「混沌」の存在である。
予備知識なしにウォーハンマーRPGに触れて、いきなり「混沌」の影が忍び寄るなどと言われても何のことだか分からないのは当然だ。
「宗教編」で解説したように、オールド・ワールドでは多くの神々が信仰されており、ウォーハンマーRPGで主な舞台となるライクランドは、エンパイアという国の領邦の1つにすぎない。
このエンパイアでは、シグマー教という初代皇帝を神格化した神が主教となっており、このシグマー教がエンパイアの「秩序」を象徴している。
その秩序と正反対の位置づけなのが「混沌(ケイオス)」である。
混沌には4大神がいて、「虐殺、破壊、血」を象徴するコーン、「腐敗、病気、蝿」を象徴するナーグル、「悦楽、芸術、蛇」を象徴するスラーネッシュ、「歪み、変化、陰謀」を象徴するティーンチである。
当然、これら禍つ神々を崇拝することは違法であり、魔狩人に知れようものなら即刻、死罪となる。
それでもなお、社会の隅でひっそりと、もしくは暗く陰湿な地下深くで混沌信仰は根強く息づいている。
普通の神々に比べ、混沌の神々は人々の欲望に正直な性格で、迷える子羊たちによく手を差し伸べてくれる。
混沌の神々の手を取った者に人々は「堕落」とレッテルを貼り、非難や排除、時には私刑を以て社会的制裁を課すが、人々はそんなに模範的に生きているのだろうか?
尊敬を集めるあの有名人も人知れず怪しい薬や既得権益獲得のために陰謀を企てたりしてはいないだろうか?
混沌の4大神
堕落
聖なる祝いの日(フェスターク)には、シグマー教の司祭たちが、善良な民に向けて、混沌の恐ろしさを堕落者の末路を例に挙げ、忍び寄る混沌の誘惑に対してどのように耳を塞ぐべきなのかを説く。
まるで、細い崖道を渡るかのように一歩でも足を踏み外せば、堕落と混沌変異が待ち受けているかの如く善良な市民を脅すのだが、司祭たちの主張は間違っていない。
昨日まで、町の有力者として尊敬を集めていた人物が混沌変異を暴かれて、一夜で全てを失うことも事実としてあるからだ。
混沌は、人々の生活に溶け込み、ちょっとした悪行を成功させてやったり、軽い欲望を叶えてやることで、人々の懐に入り込む。
少し、関わり過ぎたと思った時には手遅れなのだ。
ウォーハンマーRPGには、キャラクターがどの程度、堕落したかを示すために「堕落ポイント」というものがある。
堕落ポイントの獲得
堕落ポイントは、君の魂が混沌の暗黒神の下へとゆっくりと滑り落ちていく指標である。
堕落ポイントを獲得できる機会は大きく分けて2つで、「邪悪な取引」「堕落の影響力」である。
邪悪な取引
どうしても失敗できない場面でテストを行い失敗してしまったなら、「幸運点」を使用して再ロールすることができる。
しかし、幸運点を使った再ロールも失敗したとしたら…。
このような場合、悪魔が君に囁くのだ…「旦那、堕落ポイント1点獲得すれば、再再ロールできますぜ」
この悪魔は、GMの口を借りて君に語りかけているのかもしれないし、君の心を直接掴み、気が付いた時には「マスター、堕落ポイント1点獲得して、再再ロールします」と言わせているのかもしれない。
いずれにせよ、混沌の神々が不可能を可能にさせてくれたことには間違いない。
混沌の影響力
混沌に汚染された「場所」に足を踏み入れたり、「人物」に関わったり、「物体」に触れた・所持したりした場合に、その影響力がキャラクターに堕落ポイントを付与する。
それ以外にも、ワープストーンはもちろん、ディーモンのような異界の魔物や混沌の寵愛を一身に受けた人ならざる者に出くわした場合や、遺跡で見つけた冒涜的なアーティファクトの影響を受けて、堕落ポイントを獲得できる場合もある。
そのような場合、「邪悪な取引」のように1点ずつとは限らない。
ルールブックP.182~183の「小規模」「中規模」「大規模」の程度によって獲得できるポイントが変化する。
接触などの肉体的な影響力なら「手強い」±0〈肉体抵抗〉、祈りや会話のような精神的な影響力なら「手強い」±0〈冷静さ〉でテストを行い、失敗すれば堕落点を獲得となる。
また、テストの成功SLによっては、堕落点獲得に至らない場合もあるので、ルールブックを参照すること。
堕落の進展
堕落ポイントが何点貯まれば、混沌の神の寵愛を授けられるのだろう?
その答えは【意志力】ボーナス+【頑健力】ボーナスの合計値である。
例えば、【意志力】ボーナス+【頑健力】ボーナスがともに3点のキャラクターなら6点までは堕落点をプールできるが7点目を獲得した時点で、「手強い」±0〈肉体抵抗〉テストを行わなければならない。
テストに成功したなら、なんとか今回は混沌の影響をはね除けたが、次に8点目、9点目と点数を重ねる度にテストに成功し続けなければならない。
テストに失敗した場合は、君の【意志力】ボーナス分の堕落ポイントと引き換えに、キャラクターの心か身体のどちらかに混沌変異が発症し始める。
「心身の崩壊(ルルブP.183)」の表を使い、キャラクターの種族の場所でロールをして心と身体のどちらに混沌変異が起きたかを決定する。
その上で、「肉体堕落表(ルルブP.184)」か「精神堕落表(P.185)」でロールを行い、混沌変異を決定する。
堕落の上限
「堕落ポイント」の上限は、【意志力】ボーナス+【頑健力】ボーナスの合計値であったが、堕落そのものはいくつまで重ねられるのか?
キャラクターが耐えられる「堕落の数」は、【頑健力】ボーナスの数までである。
混沌変異の数が【頑健力】ボーナスの数を上回ったら、君は戯言をさえずるだけの不気味な肉塊と化してしまう。
もはや、キャラクターとして冒険を続けることは不可能で、新しいキャラクターシートを用意しなくてはならなくなるだろう。
堕落ポイントの喪失
君の心にこびりついた堕落を削り落とすには並大抵の努力では「普通」に戻ることはできない。
混沌の神々は囁くだろう「普通とは何か? 」と、そのような哲学的な問いは置いておいて、一旦、獲得した堕落ポイントを減らす方法は、混沌変異を獲得した時の【意志力】ボーナス分の値だけではない。
「暗黒のささやき」と「赦免」の2通りがある。
暗黒のささやき
混沌の神々やその手先は君の行動を常に監視しており、来るべき悪事の機会を狙っている。
偶然か必然か、状況が許し悪事を働けるチャンスが到来したなら悪魔は舌なめずりをして、君に囁きかける。
「旦那、今が堕落ポイントを使うチャンスですぜ」
例として、下記のような行為を行えば、堕落ポイントが1点消えるだろう。
・敵1体の逃亡を許す
・“間違って”味方1体を射撃してしまう
・見張りの当直で居眠りしてしまう
赦免
PCはこれまで行いを悔い改め、過去の過ちを洗い流したいと思う場合があるかもしれない。
一度、堕ちた者が「普通」に戻るには想像を絶する努力や目覚ましい活躍が認められなければならないだろう。
基本的にはGMと相談の上でというのが前提ではあるが、シナリオの中に堕落ポイントを取り除くイベントが組み込まれているものもある。
ルールブックと重複するが、例を挙げておく。
・冒涜された神殿を洗い清める。
冒涜された神殿に足を踏み入れ、長時間滞在すること自体が堕落ポイントを積み重ねてしまう要因なので、己の【意志力】との戦いとなる。
それに打ち勝ち、一定の成果を認められた者のみが、神に赦されるだろう。
・巡礼の旅に出て、長く危険な旅路の果てに司祭長からの祝福を受ける。
・不浄なアーティファクトを破壊するか、邪悪な要素を取り除いて無害化することで禍つ神々の企みを潰えさせる。
・混沌に敵対する神格を崇める清浄な教団に入信して、この先の人生全てを捧げる。
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