ハントリッヒ:Handrich

この神格は信仰される国や地方で呼び名が違う。
エンパイアでは「ハントリッヒ」で、荒ケ原では「ヘンドリク」で、エスタリアでは「オー•プロスペロ」で、テイリアでは「メルコピオ」である。

ハントリッヒは、ヘンドリク:Haendryk とも呼ばれ、交易商、商人、中産階級といった商取引によって利益を得ている人々に人気のある下位神である。
小作農衆に尋ねれば、商売人は詐欺師そろいだという答えがほぼ異口同音に返ってくるものだが、ハントリッヒ教団員たちの関心は、純粋に商取引のみによって富を蓄えることにある。
商人の利益になることは、その周りの人々にもつながることも多いということなのである。
教団の本拠があってどこよりも影響力の強いマリエンブルグ以外の土地では、ラナルドの一側面である“取引する者”ラナルドと、ハントリッヒを混同する人が後を絶たない。
ただし、識者にとっては両者の違いは明らかである。
ラナルドを信仰するのが泥棒、密輸商人、ぺテン師といった連中であるのに対して、ハントリッヒは合法的な取引を司る神なのである。
もっとも、両神格ともにその限りではない事例はいくつもあるのだが。
“取引する者”ラナルドとハントリッヒの教団は、健全な競争関係を築いており、今までのところ暴力行為に及んだためしはない。
とはいえ、両教団のあいだでは、窃盗や裏取引のような卑怯なやり口も、フェアプレイの範囲内だと認識されているのだが。
ハントリッヒ教団は、大商人や裕福な中産階級たちによる友愛会や秘密結社のような組織である。
これらの集団の目的は、競争精神の育成や、商売で競合相手を屈服させることや、仲間や神との交流による精神的な啓蒙が含まれる。
これらの集団は極めつけの階級組織であり、内陣組織に近づく前に多くの儀式に合格しなければならない。
たいていの商人は、自分はギルドか何かに加入しただけと信じており、舞台裏で行なわれている陰謀には気がつかない。
しかし、内陣組織は、価格決定や低税率のために働いており、神殿建築のための資金を調達し、ハントリッヒの言葉と影響力を広めている。
これは噂だが、教団の高位構成員たちは、資産を増やすための儀式魔術に手を染めているとのことである。

シンボル
ハントリッヒの主要なシンボルは黄金の円盤であり、それが金貨を表すというのが大方の意見である。
教団員は、何の彫刻もない金貨をポケットにいれるか首飾りにすることで、神への献身を表す。
ハントリッヒのシンボルにはもうひとつ、指を交差させた手もあり、一般にラナルドのシンボルとされているものと同一のものとなっている。
ハントリッヒ教団も、“取引する者”ラナルド教団もシンボルの正当性を主張して譲らず、たいへんな論争となっている。
マリエンブルグでは、ハントリッヒ教団員が教団の仲間に右手でこの秘密のシンボルをつくって見せる一方で、“取引する者”ラナルドの教団員は左手を用いる。
しかし混乱は日常茶飯事で、教団員が対立する教団の一員を仲間と勘違いしてこのサインを見せたことで、激しい口論になったことは一度や二度ではない。

信仰されている地域
ハントリッヒ信者は主にマリエンブルグで見かけられる。
その都市ではハントリッヒは幅広く人気を集めており、もともと根強いマナンの存在感を霞ませることもあるほどだ。
独立独歩の精神で歩むマリエンブルグ商人が、“交易の神”に捧げ物をする機会を見逃すことは考えにくい。
マリエンブルグ以外では、ハントリッヒ信者はエンパイアの大都市で主に見かけられる。
アルトドルフに小さな神殿があるが、いずれその建物を拡張するか、より大きなものに建て替えようという計画がある。
他の都市では、公設市場付近と大商人の館の中でハントリッヒの聖堂が見かけられうる。
ハントリッヒの敬虔な教団員は、稼ぎをあげるための日々の売買にいそしみながら、その折々に神の言葉を広めることに喜びを見いだす。
ハントリッヒは、エスタリア、テイリア、およびボーダー・プリンスの都市国家の一部でも人気があり、信者の数は堅調に増加している。
ラナルドの教団を信用していないか迫害する都市や町は、ハントリッヒの教団員はとても容易く受け入れがちである。
そのことから、ラナルドの教団員が、“合法的”な存在になりすますために、ハントリッヒの信者からペンダントを盗むということも時々ある。

性格
ハントリッヒは、富を得ることと費やすことの両方に喜びを見いだす陽気で満ち足りた人物として描かれる。
彼は至上の売主であり、魅力的で人当たりがよく、教団員たちを単なる崇拝者ではなく、商
売仲間でもあると見なしている節がある。
ハントリッヒは商取引に辣腕をふるい、教団員たちにも頭の回転と手早さで取引相手を出し
抜くことを期待する。
あらゆる商取引をハントリッヒが監視しているのだと教団員たちは考えている。
この教団では慈善活動も大いに推奨されるが、それらは往々にして、税金逃れや商品の視察逃れといった第二の目的も視野に行なわれる。
ハントリッヒは影の側面においては強欲にして人心操作に長けており、結果が手段を正当化するという信念を熱心に説く。
ハントリッヒに言わせれば、誰かの無知や愚かさにつけ込んで儲けたとしても、その金はよりよい事業のために使えるではないかということになる。
そして教団員たちには、一般大衆に尊敬される人物を装いながら、裏で不正価格や欠品偽装をして金を巻き上げるというような、二面性を兼ね備えることを求めるのである。

 

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コメント

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