エンパイアの建国期には、ウルリックやタールとリアのような神々の代わりかそれらと一緒に、多くの神々や精霊が信仰されていた。
これらの信仰の中には、より強力な神々の信仰に吸収されたものもあれば、他の信仰の狂信者たちに弾圧されたもの、たんに世に知られることなく消え去ったものもあった。
そうした古代神のなかに、タールとリアの権威に屈服するよりも、自分を支えるわずかな信徒たちと一緒に姿を隠した、狩りと繁殖の精霊である“飲み干す者”アハルトがあった。
初期の時代、信仰を統一しようと固く決意したタールとリアの司祭たちは、アハルトの信徒たちを狩り出した。
ついに、これらの最も狂信的な司祭たちさえも狩りを止め、アハルトの信徒たちはもはや存在しないと確信するに到った。
一千年以上にわたって“飲み平す者”アハルトは姿を消し、ついにオールド・ワールドは彼とその教団のことを忘れ去った。
しかし、アハルトは忘れたりはせず、自分の下に残った信徒たちにも忘れることないよう念を押した。
数世紀が過ぎると、彼の記憶は憎悪と復讐心で歪み始めた。
彼の司祭たちは堕落し始め、その儀式は古代の流儀の血にまみれたまがい物と化した。
今日、教団は南部諸領邦に広がっており、いつも田舎の奥深くに隠れている。
その活動は既存の教団の怒りを買う危険があり、おそらくまた別の迫害を引き起こすことになる。
シンボル
アハルトには三つのシンボルがある。
血の供物に彼が好む印である血まみれの鎌。
絞首刑にされた人間を様式化した絵――これは教団の手に落ちたタールとリアの司祭たち全てを待ち構える運命だ。
そして炎につつまれた男――これはアハルトの燃え盛る復讐心のシンボルである。
小さな枝編みの人形は彼らの先祖に大昔起こったことを祈念して祝祭の夜に燃やされ、中に囚人を一杯つめた枝編みの巨大な人形が、“聖夜”の夜に火をかけられる。
信仰されている地域
この教団は上ソル川(その周囲にかつてのソランド大領邦が形成された)の河岸沿いで誕生した。
そこから、西はウィッセンランドへ、東はズィルヴァニアまで広まってきている。
決して数は多くないそのメンバーたちは、エンパイアのはるか南の町や村、田舎の農園の一般民衆の間に隠れ潜んでいる。
しかし、近年のタラブへイムの置ける魔女裁判では、何人もの人々がアハルト信仰にかなり似たものを信仰したとの理由で火刑に処せられており、この信仰が北に広がっていることを示唆している。
教団機構
“飲み干す者”アハルトの教団は怒りと復讐に燃えていながらも、秘密主義を保っている。教団活動が露見することで、斬首刑が科せられることを恐れているのだ。
あまりにも真実に近づきすぎた魔狩人たちやタールとリアの司祭たちは、夜のうちに静かに姿が消えてしまう。
彼らの末路は、鎌で斬りつけられるか、枝編み人形に閉じ込められて燃やされることに定まっている。
教団は、アハルトの狩りと豊穣に対する古のつながりを賞賛しており、血と繁殖性を等しいものと扱うようになってきている。
かくして、教団の古代の祝祭日は生贊を捧げることで祝われる。
来るべき収穫と狩りの成功を保証してもらうのである。
知的種族の者たちは、最も価値のある生贄であり、彼らは“黒衣”として知られる教団の司祭たちが率いる大狩猟における獲物となる名誉を与えられる。
教団の地域を旅するよそ者たちは、これらの儀式で“賓客”となる恐れがある。
戒律
・過去に我らを裏切ったタールとリアの司祭たちには常に敵対せよ。
もしも彼らを殺す手段があるなら、それをなすべし。
彼らが我らに対して行なった邪悪な行為を決して忘れるベからず。
・ 南部の人々を我らの教えに改宗させるよう務めよ。
巧妙に、辛抱強く、密かに活動せよ。
彼らは新しき神々の支配下で弱く臆病になっており、我らを裏切るやも知れぬから。
彼らの司祭たちはアハルトを承認せねばならない――選択肢を与えられながらこれを拒絶した者は殺害せよ。
・ たとえ己の命を犠牲にしてでも信者の安全を守るべし。
・ 毎月、せめて己の血を数滴だけもこれを捧げアハルトを讚えよ。
主は復讐のために渇いているのだ。
・ ディーモンやアンデッドと取引するべからず。
彼らは我らの信仰の古からの敵である。
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